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死の影ジャンドでの500戦を終えて(500 Matches with Death's Shadow by Magnus Lantto)

500 Matches With Deaths Shadow | MTGMintCard

より。

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 僕は元来グラインダーであり、来る試合来る試合で自分の好きなデッキを使って相手を打ち負かすのが大好きなんだ。そして今、特に準備するトーナメントがないこともあって僕は大好きなフォーマット、モダンへと帰ってきたのだ。

 別に驚くこともないだろうが、僕は死の影ジャンドを大いに気に入ったし、だからこそこのデッキをメタるべきだなんてことは一切口にしなかった。もしよほどのこだわりがないのであれば、紙やMOのトーナメントにおいて上位の結果を残しているリストを使うことが望ましいだろう。

 そして今回僕が伝えたいのはこの死の影ジャンドを500マッチ以上も使ってきた中で得た、「どうしてこんなリストになったのか」、「どのように相手を打ち負かすべきか」という知見である。

 とりあえず、まずはリストを見てもらおう。

死の影ジャンド

1 血の墓所/Blood Crypt

4 血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire
1 神無き祭殿/Godless Shrine
2 草むした墓/Overgrown Tomb
4 汚染された三角州/Polluted Delta
1 踏み鳴らされる地/Stomping Ground
1 沼/Swamp
4 新緑の地下墓地/Verdant Catacombs

 

4 死の影/Death's Shadow
4 通りの悪霊/Street Wraith
4 タルモゴイフ/Tarmogoyf

 

2 突然の衰微/Abrupt Decay
1 集団的蛮行/Collective Brutality
3 致命的な一押し/Fatal Push
4 コジレックの審問/Inquisition of Kozilek
2 コラガンの命令/Kolaghan's Command
1 ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil
2 最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope
4 ミシュラのガラクタ/Mishra's Bauble
1 タール火/Tarfire
2 ティムールの激闘/Temur Battle Rage
4 思考囲い/Thoughtseize
4 ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald


Sideboard

1 古えの遺恨/Ancient Grudge
2 集団的蛮行/Collective Brutality
1 致命的な一押し/Fatal Push
3 未練ある魂/Lingering Souls
1 苦い真理/Painful Truths
2 外科的摘出/Surgical Extraction
1 終止/Terminate
3 大爆発の魔道士/Fulminator Mage
1 イーオスのレインジャー/Ranger of Eos

マナ基盤について

 おそらくこのリストを見て感じる一番の違いはマナベースにあるだろう。

 まず、僕はこのデッキに森を入れる理由が特にないと感じた。どちらかと言うと黒い呪文を何度も唱えたいこのデッキに於いては、黒い土地がとても重要であり、さらに言えばこのデッキの根幹は死の影にあるために死の影を育てられない土地には用がないのだ。基本土地を引くこと自体がそもそも避けたいことであり、例えウルヴェンワルドを採用しているデッキであることを加味したとしても必要なのは沼だけでありそれも1枚で十分だといえるだろう。

 というわけでこのデッキには黒いフェッチランドがあれば十分となるのだ。確かに踏み鳴らされる地は存在するものの、デッキから序盤に引っ張ってくることはほとんどなく、どちらかというならばウルヴェンワルドを打ちながら3色を揃える、序盤のマナ事故のケアのためというのが大きい。仮に白マナを必要としない相手に3枚のフェッチランドが使えるのならば持ってくるのは草むした墓/草むした墓/血の墓所となるだろうし、赤マナ2つより黒マナ3つのほうがより有用だと考えたのである。

 とはいえ、土地を17にするか18にするかについては未だに完全な結論は出ていない。

 おおよそ17枚で回すことが多いのだが、このデッキの底力を考えるに18枚のほうがベターなのではないかと考え始めたのだ。マナスクリューを原因として負けてしまうマッチはできる限り避けたい。

 また、コラガンの命令や最後の希望、リリアナを考えるに回収したクリーチャーを即座にキャストできるようにできるのはとても大きな意味合いを持つ。とはいえ17枚でもおおよそこのデッキが動いてくれるのは事実だし、白いカードが必要ない相手には実際土地を抜くこともあるのも確かだ。

タール火について

 僕はタール火を信用していない。

 正直ショックをモダンで使う理由は今はないだろうし、たしかに昂揚という点においては使い勝手がいいカードかも知れないができる限り枚数は減らしておきたいカードである。実際最初の3Tを昂揚なしで過ごし、4T目にようやく昂揚が達成できた場合でもそれは全く問題ない。

 今回このデッキにタール火を残しているのは単に4枚目の致命的な一押しに代わる存在として使いたかったと言うものが大きい。

ゴーア族の暴行者について

 ゴーア族の暴行者についても僕は否定的である。一般にこのカードはウルヴェンワルドでサーチできるティムールの激闘と考えられているようだが、本質は完全に異なっている。

 ゴーア族の暴行者はブロッカーが並んでいる盤面でも強引に勝ちをもぎ取るために使われるカードであり、おおよそ全てのゲームにおいてはそれよりも盤面をきちんと制圧し、ウルヴェンワルドでより強い脅威を叩きつけるほうがいいだろう。一方ティムールの激闘は守りの動きに於いて輝くカードであり、多量の点数を一撃で入れたいというときに役に立つカードとなる。これは暴行者では絶対にできないことである。

 また、ティムールの激闘はコンボデッキ相手にクロックを一気に上げるカードとしても使える。ミッドレンジ戦やコントロール戦においてはどちらも欲しくないが、アグロやコンボを考えると激闘のほうがより良いカードとなるわけだ。

タッチ白について

 タッチ白についてはまた大きく考えが分かれるところがある。とは言え僕は肯定派だ。

 例えば未練ある魂は消耗戦に強いカードであり、どんな場面でも役立ってくれる。確かにPWの増量や苦い真理も強力ではあるがそれらは多くプレイするという点においては少々避けたいというところである。またこの未練ある魂自体が未練ある魂のメタになっているという点も大きい。

 といってもただでこのカードを使えるわけもなく、やはりマナ基盤にプレッシャーが掛かることとなる。4色を黒を確実に出しながら揃えると言うのは相当に厳しく、そのためにサイドボードを調整することとなった。

 先に示したように出来る限りこのデッキの赤いカードはその枚数を減らしており、また白いカードを入れるマッチアップにおいてはおおよそ赤いカードがデッキから消えることとなるため、そこまで難しいものではなかった。また相手の幽霊街や大爆発の魔道士を避けるために神無き祭殿はぎりぎりまでフェッチセずに持っておくのがいいだろう。

デッキに入り得たカードについて

 現在使ってはいないものの、今後使いうるカードについてここで示しておく。

四肢切断

 メインデッキにおける探査クリーチャーやエルドラージにおける最高の解答。現在は致命的な一押しや突然の衰微で十分だが、もし上に示したようなカードを多く搭載したメタゲームが想定できるならば搭載することと成るだろう。ただ、現在はミラーマッチや対親和を想定するにカードの価値が大きく下がってしまうため現在は採用していない。

虚無の呪文爆弾

 対ドレッジを考慮するに、なんとかしてサイドボードに入れたいカードではある。しかしながらどうしてもうまくサイドボードに収めることができなかった。いくつかのマッチアップにおいて活躍できる丸いカードではあるものの、おおよそのそれでは弱いカードとしかならない。今回はコンボ対策、瞬唱対策を兼ねて墓地対策には外科的摘出を選択しているが、その違いは殆どないといってもいいだろう。

コジレックの帰還

 エルフを始めとする横並びのデッキはこのデッキの弱点となりうる。しかしその手のデッキはメタゲーム上に数が非常に少ない。また、刻まれた勇者に対処することもできるものの、その役割は古えの遺恨に今回任せることとした。

 

MOでの結果について

 最初に言っていたように、このデッキを使い僕は500マッチ以上の試合をこなしてきた。おおよそ60種類を超える様々なデッキと対戦したが、今回の記事では10マッチ以上当たったアーキタイプについてのみ、その詳細を記すものとする。確かにサンプル数は信用できるほど多いものではないが、多少なりとも得られる物はあるだろう。

 まずはこの結果についての数字から考えていきたい。500マッチを終えてもなお、このサンプルサイズが大きなものでないことに気づけることだろう。そして今回それぞれのデッキについて誰が使っていたかも一切考慮していない。たしかにモダン環境の民は悪いプレイヤーではないものの、プロチームとはまた異なる集団である。もしプレイヤーが変化すればこの結果もまた変化しうるのである。

 そしてこの結果を見る限り、とても素晴らしいデッキだったと考えられる。というのもこのレベルの戦績を残せたデッキは殻やラリー、もしくはSCZくらいであったためだ。

 そして、今このデッキは禁止されるほどのものではないとも予測している。しかしながら懸念すべきはこのデッキに強いデッキがメタゲーム上位にあまり存在していないことである。ヘイトカードを使っても打ち倒しにくいデッキであるがために、デッキ単位での対策が必要なデッキなのだが、そのようなデッキはメタゲームの上位にまだ上がってきていないのである。

ミラーマッチの戦い方

 先の結果の中で、ミラーマッチの勝率75%というデータは特筆すべきものとなるだろう。自慢するわけでもないが、これほどの勝率をあげられるということはそれだけ正しい動きをしているということであり、このマッチアップについてよりうまく立ち回る方法があるということだろう。

 かつてのSCZのミラーマッチは2-3Tでゲームが終わるために、問題となるカードの枚数は必然的に少なくなっていた。しかしながらデッキの根本部分は大きく変わることとなった。両者がどちらかというならば脅威を叩きつけるよりは相手への解答をより多く持つようになったためにゲームプランの作り方が非常に重要となったのである。というわけでどのようにハンデスを使いどのように勝利への道を作っていくかが鍵となるのだ。単純にクロックを叩きつければいいというゲームではもうないのだ。

 今回使っているリストはミラーマッチを意識した物となっており、実際にその勝率にも現れている部分がある。白をタッチすることによって、一押しや衰微をタール火より優先することによって、このような勝率を生み出すことができたのだ。

 もしこのデッキを使うのであれば、ミラーマッチについてきちんと練習しておくのが勝利への第一歩になるだろう。相手の動きを理解することによって自身の勝率は大きく動くこととなる。

ミッドレンジ戦について

 僕はこの死の影デッキが最強のミッドレンジだと思っている。

 一般的に死の影を打ち倒すためには多量の除去を使えばいいと考えられているのだが、僕はそれは間違いだと思っている。実際ジャンドは死の影の餌だと思っているし、アブザンも悪いマッチアップとは言い難いのだ。さらに言えばエルドラージタックスのようなデッキも同様に死の影にとって都合のいいマッチアップと言える。

 その理由はとても単純で、死の影が非常に効果的であるという点にある。このデッキは一押しを手に入れることによってジャンドより強くなったジャンドなのである。

 ミラーマッチにおいてはほぼ除去やハンデスの枚数は同様であるために脅威の枚数がそのまま重要と成る。そしてこちらのデッキの土地の枚数は少なく、8枚ものキャントリップ、またウルヴェンワルドのちからによって相手より早く動くことができるのである。

 ミッドレンジがこのデッキをすりつぶしきるのは実質的に不可能であり、もしそれを考えるのならばむしろコントロールにシフトしなければならないのだ。

対コントロールについて

 エスパー、青白コントロールは一番恐れているマッチアップである。そもそものサンプル数が得られていないというのも大きい。

 実際のところこの手のデッキに対しての勝率は10-7と悪いものではないのだがこれは相手のデッキがまだ洗練されていないために最良のビルドがなされていないために得られたものであり、実際にプレイも難しいものである。実際に練度が高いプレイヤーと戦った際には不利に感じた。

 実際に軽量除去と至高の評決の組み合わせはこちらの脅威を全て対策してくる上、相手の出してくるクリーチャーはほぼいなかったり、トークンであったり瞬唱や前兆の壁、台所の嫌がらせ屋程度であったりするためにこちらの除去もあまり役に立つとは言い難い。

 グリクシスコントロールはそこまで悪いマッチアップではなく、むしろ都合がいいマッチアップではあるが、ここでグリクシス死の影がこの頃増えてきつつあることには言及しておこう。もし死の影ジャンドに対抗したいのならばコントロールを使うべきだろう。除去だけに頼り切り、謎めいた命令のような強力なアドバンテージを得られるカードを使わないのは良くないだろう。

コンボデッキとの戦い方

 対(土地)コンボにおいて考えねばならないことはハンデスである。

 正直これらのマッチアップは相手の練度に大きく左右される事となる。このデッキをこの手のコンボデッキで打ち倒すことは難しいものの、それでもこれらのデッキを使うだけの価値はあるというのが面倒ではある。

 これらのデッキに関して今回は大きく2つのカテゴリに分けたいと思う。

 トロンやストームはこのデッキが有利となる。ストームは自身の望む動きを取ることが難しく、トロンはそもそもそろうかどうかもわからないという部分がある。

 タイタンやむかつき、グリセルシュートはトロン、ストームよりは面倒な相手と相成る。このデッキ自体はSCZの頃より1-2ターンキルターンが遅くなっているために相手が準備するだけの猶予が増えることと成る。タイタンやグリセルシュートのようなデッキはそれだけの余裕があれば十分に動けるだけのカードを持っているし、ハンデスがなければ厳しいものとなる。むかつきについてもメインゲームはそれほど難しくないものの、サイド後には4枚の力線が貼られることになり相当の苦戦を強いられることとなる。

並べるデッキの対処法

 ここで死の影ジャンドに対する最高の対処法であるデッキの紹介で今回の記事を閉じようと思う。エルフ、ドレッジに代表される横に並べるデッキが死の影ジャンドの一番の対策となる。これらのデッキはどちらも戦績が著しく悪く、それらに共通するのは似たような、替えがきくクリーチャーを多く横に並べるというものだ。

 多量のチャンプブロッカーに対峙したこのデッキはティムールの激闘がない限り相手のライフを削ることができず、またこのデッキの単体除去も効果が非常に薄いこととなる。また相手がひとたび展開を始めればこちらのコントロールは一切不可能となり、相手の脅威に怯えることとなるのだ。

 そうなるとマーフォークも同様にこのジャンルに入るのでは?と思われるかもしれないが、マーフォークの場合には「替えがきかない」クリーチャーで形成されているため今回は別ジャンルとなるわけだ。確かに一押しに比較的弱いために若干処しやすくはあるものの、彼らには島渡りがあるために対処できない、面倒なマッチアップにもなりうることは覚えておいて損はない。

 

 というわけで今回の記事を読んで死の影ジャンドについてどのように立ち回るべきかがわかってもらえたのではないだろうか。近いうちにサイドボードガイドも書こうと思っているためもし気になる点があれば気軽に質問してくれると助かるよ!