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Baltimoreで使った進化型キキコードについて(Darwin Chord in Baltimore BY JEFF HOOGLAND)

Darwin Chord in Baltimore | MTG Card Market

より。

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 先週末のBaltimoreは正直想定外の連続だった。金曜夜のフライトがキャンセルされた後、土曜朝のフライトの遅れも相まって最初の4ラウンドに参加できないことが明らかになっていた。byeを含めても2-2からのスタート、かつ3hの睡眠などで体調も最悪の状況であり、5-4という不甲斐ない結果に終わってしまった。

 そして悲劇はそれだけでは終わらなかった。会場外はべちょべちょでUberも不調だったがために帰り道は雨の中をひたすら歩く羽目となり、ホテルについたらすぐに着替えてデッキをガサゴソすることにした。それはキキコードのパーツで、調整用のカードも多量に持ち込んでいた。もちろん、それはSCG Dallasでベスト16に入った時のレシピである。

  EMN発売以来のSCGOpenはスタンダードでの開催であったためにモダンの調整は全く行っていなかった……どころか正直Dallas以来デッキにすら触っていなかった。そのために異界の進化がどの程度このデッキにフィットしているのか試す時間に不足していたのである。とはいえ、その段階でも何点か気づいたり思っていたりしたことはあった。

  • 召喚の調べ、ナヒリ、異界の進化の全てを使うのは流石に弱すぎる。
  • エムラを1T目に引くのはもうあきた。
  • 異界の進化は打ち消しに弱い。
  • 復活の声は打ち消しに強い。
  • 昨日3時間しか寝てなくて今20時間おきっぱ

 そしてこのデッキにおける異界の進化の一番の心配な点はジャンドやグリクシスに代表される消耗戦を強いてくるようなデッキに対してこのカードがとても弱いという点にあった。この手のデッキに対してナヒリは除去としても、ルーターとしても、そして勝利手段としてもとても優れているカードではあった。一方異界の進化は盤面がある程度完成していなければ全く有用性がないと言ってもいいくらいのカードであった。幸運なことにもジャンドの使い手であるChris Julianoが調整に手伝ってくれた。

 そしてすぐに僕は異界の進化を4枚積んで調整を始めることとした。数ゲームで一気にこのデッキを練り上げることとなった。

 そしてそれは4ゲーム目くらいのことだったあろうか、復活の声が盤面にある状態で異界の進化をうち、ナラー夫妻を盤面に送り出したのだ。召喚の調べだとコンボを達成しようとしても阻害されていたが、一方で復活の声からナラー夫妻の動きは対ジャンドにおいて圧倒的な優位な盤面をつくり上げることができたのである。この動きは相当なものだとわかった。

 そしてジャンドと五分の成績を確認した後、僕はこのレシピをスリーブにつめるものとした。

Darwin Chord by Jeff Hoogland

3rd place at SCG Baltimore Classis

Creatures
1 Spellskite/呪文滑り
4 Birds of Paradise/極楽鳥
2 Eternal Witness/永遠の証人
1 Noble Hierarch/貴族の教主
1 Reclamation Sage/再利用の賢者
2 Restoration Angel/修復の天使
1 Reveillark/目覚ましヒバリ
1 Scavenging Ooze/漁る軟泥
1 Selfless Spirit/無私の霊魂
1 Thragtusk/スラーグ牙
4 Voice of Resurgence/復活の声
3 Wall of Omens/前兆の壁
1 Eidolon of Rhetoric/弁論の幻霊
1 Elesh Norn, Grand Cenobite/大修道士、エリシュ・ノーン
1 Kiki-Jiki, Mirror Breaker/鏡割りのキキジキ
1 Linvala, Keeper of Silence/静寂の守り手、リンヴァーラ
2 Pia and Kiran Nalaar/ピア・ナラーとキラン・ナラー
Spells
3 Chord of Calling/召喚の調べ
3 Path to Exile/流刑への道
4 Eldritch Evolution/異界の進化
Lands
1 Arid Mesa/乾燥台地
1 Fire-Lit Thicket/火の灯る茂み
1 Horizon Canopy/地平線の梢
2 Razorverge Thicket/剃刀境の茂み
1 Sacred Foundry/聖なる鋳造所
2 Stomping Ground/踏み鳴らされる地
1 Temple Garden/寺院の庭
4 Windswept Heath/吹きさらしの荒野
4 Wooded Foothills/樹木茂る山麓
3 Forest/森
1 Mountain/山
1 Plains/平地
Sideboard
3 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
2 Fulminator Mage/大爆発の魔道士
1 Obstinate Baloth/強情なベイロス
1 Qasali Pridemage/クァーサルの群れ魔道士
1 Scavenging Ooze/漁る軟泥
1 Celestial Purge/天界の粛清
2 Lightning Helix/稲妻のらせん
1 Path to Exile/流刑への道
1 Kataki, War’s Wage/戦争の報い、禍汰奇
1 Melira, Sylvok Outcast/シルヴォクののけ者、メリーラ
1 Elspeth, Sun’s Champion/太陽の勇者、エルズペス

  そして参加したトーナメントはとてもうまく進んだ。スイスラウンド7-1の後、準決勝にて敗退することとなった。相対したのは以下のデッキである。

  • 青黒LO
  • 青赤デルバー
  • バントエルドラージ
  • ジャンド
  • バント聖遺
  • マーフォーク
  • トロン
  • バーン

そして以下のデッキに敗北する事となった。

  • バーン
  • ドレッジ

 ではまず、今までのキキコードと今のこのデッキがどのように違うのかについて述べていきたいと思う。

 はじめに今回、黒や青をタッチすることはなかった。罪の収集者やエレンドラ谷の大魔導師といったカードは確かにタッチするだけの価値があるカードである。より直線的に動いてくるようなデッキに対して確かに効果的なカードではあるけれども、今回異界の進化を含め、7枚のサーチカードを擁することによって今まで以上に弁論の幻霊へのアクセスが容易になったこともあり、今回は採用を見送るものとした。

 そう、4色目のタッチは全く難しいものではないものの、依然としてそれ相応のコストは存在している。ショックランドの枚数が増えることでライフが足りなくなったり、その土地を場に出せなかったせいで負けてしまったりすることも十分にありえるだろう。

 そしてさらなる変化として根の壁を不採用とした。異界の進化を採用することによって召喚の調べの必要性が薄くなり、したがって根の壁もその枚数を減らすこととなった。ナヒリのためにマナ加速するための根の壁は確かに強いものだったが、異界の進化の場合には2T目に出したクリーチャーをそのまま異界の進化に使うためになおその必要性が薄くなった。異界の進化でアドバンテージを失うことを考慮した結果、前兆の壁や復活の声といったカードのほうがより使い勝手が良いように思ったわけなのだ。

 そして進化先として、今回新たなカードが2枚搭載された。無私の霊魂とエリシュ・ノーンである。前者についてはもともと召喚の調べを使っていた頃から欲しかったカードそのものであり異界の進化なしにおそらく採用していただろうカードではある。素引きすれば飛行2/1クロックとして役立ってくれるだろうし、召喚の調べからまるでカウンターやコンバットトリックのようにデッキから飛び出てくるのは脅威でしかない。

 エリシュ・ノーンは以前のデッキでは一切使う気もなかったカードである。召喚の調べX=7は相当に難しいものだったからだ。しかしながら5マナの生物をサクるだけで出せるというのは十分有り得る話あった。10のラウンドに於いて僕はエリシュ・ノーンを何度も進化させ、調べ、そして手札から叩きつけた。たとえ異界の進化を含め4T目にキャストすることができなくても、エリシュ・ノーンは盤面に現れるだけで大半のモダンのデッキをだまらせることができるようになる。すぐに除去されたとしても一気に盤面を変化させることができるのはとても大きな意味合いをもった。

 そして最後に、サイドに刺した太陽ペスについても触れておきたい。このカードはメジャーなイベントでは使ってこなかったカードではあるが対ジャンド戦を想定する場合には素晴らしいカードとなることは覚えておいてもらいたい。(ただ他のデッキ相手だと有用ではないことも追記しておこう)

異界の進化か、ナヒリか。

 そして調べを使うプレイヤーが一番気にしていることは「異界の進化はナヒリより優れていたのか」ということだろう。

 正直、今の感想としては「わからない」というのがぴったりなものとなる。Baltimoreにおいて異界の進化は初めて使ったものであり、まだ正当な評価を下せるような結果も得ていない。

 ただ少なくとも、ナヒリと異界の進化ではデッキの根本部分が変わるように感じた。ナヒリを採用していた頃にはその除去性能も相まってコントロール型コンボデッキとして動いていたが、異界の進化がもたらすプレッシャーを考慮すると今のこのデッキはアグロ型コンボデッキになったと言っていいだろう。よってメタゲームに応じて適切な型を選ぶことが必要になる、というのが簡単なまとめとなる。

深化する進化

 今回の経験を踏まえ、僕は進化型キキコードはこのようなデッキになるのがベストであるように感じた。

Creatures
1 Obstinate Baloth/強情なベイロス
1 Noble Hierarch/貴族の教主
1 Elesh Norn, Grand Cenobite/大修道士、エリシュ・ノーン
1 Kiki-Jiki, Mirror Breaker/鏡割りのキキジキ
3 Wall of Omens/前兆の壁
1 Spellskite/呪文滑り
1 Thragtusk/スラーグ牙
2 Restoration Angel/修復の天使
1 Ruric Thar, the Unbowed/自由なる者ルーリク・サー
4 Voice of Resurgence/復活の声
1 Scavenging Ooze/漁る軟泥
1 Courser of Kruphix/クルフィックスの狩猟者
2 Eternal Witness/永遠の証人
1 Reveillark/目覚ましヒバリ
4 Birds of Paradise/極楽鳥
2 Pia and Kiran Nalaar/ピア・ナラーとキラン・ナラー
1 Selfless Spirit/無私の霊魂
Spells
3 Chord of Calling/召喚の調べ
3 Path to Exile/流刑への道
4 Eldritch Evolution/異界の進化
Lands
1 Gavony Township/ガヴォニーの居住区
2 Stomping Ground/踏み鳴らされる地
4 Windswept Heath/吹きさらしの荒野
4 Wooded Foothills/樹木茂る山麓
1 Sacred Foundry/聖なる鋳造所
1 Horizon Canopy/地平線の梢
1 Temple Garden/寺院の庭
1 Arid Mesa/乾燥台地
1 Fire-Lit Thicket/火の灯る茂み
2 Razorverge Thicket/剃刀境の茂み
3 Forest/森
1 Plains/平地
1 Mountain/山
Sideboard
2 Fulminator Mage/大爆発の魔道士
1 Qasali Pridemage/クァーサルの群れ魔道士
1 Melira, Sylvok Outcast/シルヴォクののけ者、メリーラ
1 Kataki, War’s Wage/戦争の報い、禍汰奇
1 Celestial Purge/天界の粛清
3 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
1 Scavenging Ooze/漁る軟泥
1 Path to Exile/流刑への道
1 Eidolon of Rhetoric/弁論の幻霊
1 Reclamation Sage/再利用の賢者
2 Lightning Helix/稲妻のらせん

  ベスト4の時のレシピとは大きく異なっていることがすぐに分かるだろう。一番大きな点はシルバーバレットの中でもメイン戦で引きたくないカードを全て抜いてしまったところにある。というのもこのデッキは今までのキキコードとは違い、よりアグレッシブに攻め立てる必要が出てきたからだ。確かに未だに流刑への道は残っているけれどもそれはあくまで感染のような超速クリーチャーコンボに対してのものでしかなく、またもし呪文型のコンボデッキに出会うこととなればサイド後の賢者や幻霊の力を借りることとなるだろう。

 そして特筆すべきは強情なベイロスをサイドからメインに昇格したというところにあるだろう。バーン対策にもう孤独な宣教師は使われていないものの、3T目進化から飛び出てくるベイロスはとても強力なのだ。

 そしてさらなるカードとして、こいつが追加されることになった。ルーリク・サーだ。

 ルーリクは他のカードでは今までできなかったような強烈なロックを掛けることができる。そして対処できてもできなくても、少なくとも6点のダメージは叩きつけられることとなるだろう。

他の候補

 最後に、台所の嫌がらせ屋について触れておきたいと思う。異界の進化を見た時に多くのプレイヤーがこのカードとのコンボを考えたことだろう。確かに実質使い回すことができる進化の種は安定性という点では素晴らしいが、ライフ回復量についても、パワーについても、昨今のモダン環境を鑑みるに正直ベイロスや宣教師より評価が高いとはいえないため採用しなかったのだ。

まとめ

 新たなセットが出るたびに、僕はこの召喚の調べデッキに新たなパーツが加わらないかと楽しみにしている。幸運なことに次に開催されるSCGInviはスタン/モダンの2フォーマット制なのだ。僕はぜひその場で、キキコードこそモダン最強のデッキであると示したいと思う。

 またもし、最新のレシピについて知りたい人は、Youtubeで動画を配信しているからぜひ見てもらいたい。

 え?このデッキについて知りたいことがある?触れてないことについても聞きたい?だったらぜひ、コメントで聞いてくれ!

 じゃあね! Jeff Hoogland