目か、それとも寺院か。(The Eye Or The Temple? by ADRIAN SULLIVAN)
StarCityGames.com - The Eye Or The Temple?
より。
ご無沙汰してます。禁止制限も気がつけばあと3日くらいでしょうか。
※今回デッキリストは英語のみとなっております、ご了承ください。
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しかし、質問としてはとてもシンプルだ。
エルドラージはWotC社が動かざるをえないほどの影響をモダンに与えることとなった。……となると気になるのはどちらが禁止されるのか、というものだ。
PTOGWの後、モダンと言う環境は完全にE-spor……エルドラージによる支配の下となり、多くの人から禁止を望む声が出ることとなった。そして、その槍玉に挙げられているのがこの2枚、ウギンの目とエルドラージの寺院だ。
PTから2ヶ月がたち、様々なデータをかき集めることができた。……それを一度見直すところから始めてみようと思う。
PT前の準備について
プロツアーの準備は、通常、非常に不完全たるものだ。さらに、モダンのような広漠な環境になればその傾向は更にひどくなると言っていいだろう。スタンダードですら多様なデッキがあるのに、といえばおおよそ理解はしてくれることだろう。
環境にTier1にあたる4つのデッキとTier2にあたる3つのデッキがある、と想定してみてほしい。もしTier1のデッキの中で最高のデッキを使おうとするのならば、その総当たり、つまり6つのマッチアップを試せばいいだけだ。ではTier2も試そうとするならば……?そうなると21ものマッチアップを試さなくてはならない。
実際のところ全てを試すことがあるのか、と聞かれると若干の減少はあるとは思うがそれでも莫大な数になるのはわかってもらえるだろう。
そして考えてみてほしい、PTOGWでのTier1は10はあっただろう。そしてTier2としても6つくらいは候補に上がることとなる。そしてモダン環境なんてものはおおよそ禁止リストの改定以外で変化することがない。さあ、Tier1最高のデッキを決めるために……36ものマッチアップを?Tier2なしで?新セットで生まれたデッキも試せずに?
巨大なチームですら、そんなことを試している時間はもったいないと言ってしまっていいだろう。フルスポからPTまでの時間は限られているし、ドラフトの練習だって必要だ。だからチームでの調整にはショートカットが使われることが多い。
ショートカットといってもそう変わったものでもない。例えばアブザンカンパニーを調整しているとき自分以外がこのデッキが良いといってるのにもかかわらず自分は気に入らない場合、何かしらの調整が必要というサインがそこには現れているのである。それを調整し続けることによって、このデッキの核たる部分を保ちながらより良いデッキへと昇華させることができるのだ。そしてその昇華はメンバーの数が増えれば増えるほど加速度的に早くできるようになるのだ。
実際、環境が大きくかわったモダン環境を適切に分析するような方法は持ちあわせてはいない……そう、適切には。だからこそ巨大なチームでもショートカットをするのだ。たしかにそれは効率的ではあるがフォーマットに対しての自信がなければ簡単な作業とはいえないだろう。
モダンを侵略せしエルドラージ
さ、エルドラージの話に戻ろう。このデッキがプレイアブルなものだと気づけたチームはほとんどいなかったと言っていいだろう。その事実はとても大きくのしかかることとなる。そしてさらに言えば、その解にたどり着いたとしても、最良の形にはたどり着くことができなかったのだ。PTOGWでの優勝者デッキをここで振り返ってみよう。
U/R Eldrazi
Jiachen Tao 1st Place at Pro Tour on 2/5/2016
33 Creatures
4 Drowner of Hope
4 Eldrazi Mimic
3 Eldrazi Obligator
4 Eldrazi Skyspawner
4 Endless One
4 Reality Smasher
2 Ruination Guide
4 Thought-Knot Seer
4 Vile Aggregate
24 Lands2 Island
3 Cavern of Souls
4 Eldrazi Temple
4 Scalding Tarn
4 Shivan Reef
2 Steam Vents
4 Eye of Ugin
1 Gemstone Caverns
3 Spells3 Dismember
Sideboard2 Chalice of the Void
1 Ratchet Bomb
2 Relic of Progenitus
1 Spellskite
2 Gut Shot
3 Hurkyl's Recall
3 Stubborn Denial
1 Tomb of the Spirit Dragon
PT王者たるデッキだとしても、そのデッキが完全だとはいえないのだ。そこには未だに改善の余地がある。……さらにいえば、混合フォーマットとなってしまった今、PT優勝者のデッキが最強とは言いづらい、という点もないわけではない。
そして、現在使われているエルドラージはこのような形である。PTの時には影もなかったようなデッキだというものはすぐに分かってもらえるだろう。
U/W Eldrazi
Andrew Tenjum 7th Place at StarCityGames.com Modern Open on 2/20/2016
28 Creatures
4 Drowner of Hope
4 Eldrazi Displacer
4 Eldrazi Mimic
4 Eldrazi Skyspawner
4 Endless One
4 Reality Smasher
4 Thought-Knot Seer
25 Lands1 Island
1 Plains
4 Adarkar Wastes
2 Cavern of Souls
2 Caves of Koilos
4 Eldrazi Temple
4 Flooded Strand
2 Hallowed Fountain
4 Eye of Ugin
1 Urborg, Tomb of Yawgmoth
7 Spells3 Dismember
4 Path to Exile
Sideboard3 Rest in Peace
3 Stony Silence
2 Worship
2 Disenchant
2 Gut Shot
3 Stubborn Denial
Andrew Tenjumの構築はエルドラージというアーキタイプに対して大きな躍進を与えることとなった。この構築が気がつけば基本となり、モダン環境を支配することとなったのだ。……しかし、それはPTの時には現れなかったのである。
そして1週後、Gerry Thompsonの手によって、更に改良が加えられたリストが世に現れることとなったのである。
U/W Eldrazi
Gerry Thompson 5th Place at Grand Prix on 3/5/2016
28 Creatures
4 Drowner of Hope
4 Eldrazi Displacer
4 Eldrazi Mimic
4 Eldrazi Skyspawner
4 Endless One
4 Reality Smasher
4 Thought-Knot Seer
25 Lands1 Island
1 Plains
4 Adarkar Wastes
2 Cavern of Souls
2 Caves of Koilos
4 Eldrazi Temple
4 Flooded Strand
2 Hallowed Fountain
4 Eye of Ugin
1 Urborg, Tomb of Yawgmoth
7 Spells4 Dismember
3 Path to Exile
Sideboard2 Grafdigger's Cage
2 Rest in Peace
3 Stony Silence
1 Cyclonic Rift
2 Gut Shot
1 Hurkyl's Recall
2 Mutagenic Growth
2 Stubborn Denial
変更点はどこか。そう、流刑への道が四肢切断へと変わったのだ。
ウギンの目が起動できるかどうかによって戦況が大きく変わってしまうようなこのデッキにおいて、マナを伸ばさせないのは大きな意味がある。
Detroitにおいては4つ、Melboulneでは2つが決勝まで登り切った他、Bolognaにおいても3つもの青白エルドラージがTop8に残り、決勝を争うこととなったのである。
その週末を終えるまで、僕はこのメタゲームについては口を噤んでいた。というのもどのようなメタゲームが形成されるかさっぱりわかっていなかったというものもある。そして、蓋を開いてみれば最強たるデッキはメタゲーム上においても最大のデッキとなっていたのだ。
それを殺すためのデッキもたしかにあった。死せる生、アブザンカンパニーに代表される対エルドラージデッキも確かに存在した。しかしながら、それをもってもエルドラージの侵攻は食い止めることができなかったのだ。
双子がいたなら、護符コンがまだいたなら……という希望的観測はできなくもない。確信をもって言えるわけではないが、これら2つのデッキのキルターン、また特に双子側の総督/やっかい児によるマナ拘束によって2マナ土地の阻害も容易にできたことだろう。対エルドラージ戦だけを考えればピンポイントで土地を、クリーチャーを止めてやればおおよそ勝ちとはなるものの、それを許してくれないのがエルドラージなのだ。
そして少なくとも言えるのが、モダンはエルドラージに支配されきってしまっている、という事実である。
Gp Detroit、において、僕の友達であるSteve Moerkeが青白エルドラージに対して有利に立ち回れるだろう、赤緑エルドラージを作り、それは実際に有利ではあった。しかしこれは毒をもって毒を制す、という表現が最も近いような惨状である。
誰しもが、対青白エルドラージはあって5割の勝率だという結論に至りつつあり、その強さに関して異論を唱えるものもほぼいないと言っていいだろう。
さて、ではどうすべきだろうか。
ウギンの目の場合
よく言われるのが、そして僕自身もよく思うのが目のBANである。
ミミックとの組み合わせを完全に排除することができる。というのがその理由の一つだ。ウギンの目とミミックn枚を引き入れることができればもうこれは自分のペースに完全に持ち込むことができる。E-sports!エルドラージの寺院のバックアップがあればそれは尚更ひどくなるというものもある。
確かに、伝説の土地の複数引きはあまりしたいものではないが、逆に言えばウギンの目さえあればどうとでもなるデッキであることも確かなのである。
そして更に酷いことに、エルドラージの消耗戦の強さはこのカードに由来するところが大きい。対エルドラージ戦に於いては、目の起動マナを捻出できるかどうかにその展開力が依存してしまっているところがある。この点においてGerryの四肢切断>流刑への道という選択を好んでいるのだ。相手にアドバンテージを与えにくい、という点において。
ウギンの目さえなければ、この爆発的なスタートと戦線維持力を大きく下げる事ができる。では、もう一つの選択肢もみていこう。
エルドラージの寺院の場合
ウギンの目はなんだかんだ言っても伝説の土地である、だからウギンの目の禁止はない、という意見も確かにある。
確かにエルドラージの寺院を複数引くほうがウギンの目の複数引きよりパワーが高いというのは事実である。そしてエルドラージの寺院がなければ後続のエルドラージを場に送り出しにくくなり、またそのためにミミックも2/1のママとなってしまうのだ。そして、さらに言えば難題の予見者は寺院なしではほぼ確実に2T目に出てくることはない。
そして寺院の消失は現実を砕くものの安定した着地をも阻害する。そう、ウギンの目が序盤、終盤の隙を支えるのならばエルドラージの寺院は中盤の隙をなくすカードとなるのだ。エルドラージの寺院なしにエルドラージを動かそうとするのは相当の苦労が必要となる。実際にウギンの目を削ったリストは何度か見たことがあるが、寺院を削ったリストは一度も見たことがない。その点においてもこれは支持されうる意見となるだろう。
そして、ウギンの目の禁止はトロンをも殺す禁止だから、寺院を先に潰すべきだ、という声が上がっているのも考慮にいれるべきだろう。
両方禁止の場合。
エルドラージはマジックではない、E-sportsだ。という意見もたしかにある。目も、寺院も、すべてを禁止することでエルドラージの脅威から逃れることができる。トロン?まあがんばって。という人もいるだろう。
確かにミッドレンジを環境から駆逐したエルドラージを駆逐するために、この方法はありうる範囲とは言える。フェアデッキを使おうとする際にはその一枚一枚のコストパフォーマンスの良さが重要となるが、その点でエルドラージはジャンド、アブザン、グリクシスといった様々なデッキを上回るだけの実力を持っているのだ。そしてそのついでにバーンも殺しているというのは触れておいて損はない。
正直賛成したいというわけではないが、少なくともバーンだらけの環境にならないのならばこの禁止はあながち間違いとも言えないだろう。
僕の意見
ここまで自分の意見が傾いたこともあまりないのだが、僕は正直ウギンの目が禁止されると思っている。
確かに、トロンはダメージを受けるが、トロンはこのカード無しでも動ける。それ以上に僕は謎めいた命令が跋扈する青い環境を期待しているのだ。
爆発的スタートと継続的な戦線維持力、これこそ僕らが嫌うべきものであるだろうし、流刑への道が実質除去にならないようなフォーマットはこりごりだ。除去は除去らしく動いてくれる、そんなフォーマットのほうがいいだろう。
以上が僕の見解だ。では、君の見解を聞かせてもらおう。