モダン環境における、青白トロンというデッキ。(UW Tron in Modern Dom Harvey)
UW Tron in Modern | Riptide Lab
より。
リクエスト記事です。
今回デッキリストについては少々省略をしております。
また、2014年4月の記事であるため、現在の制限リスト、メタゲームとは大きく異なっております。ご注意ください。
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青をメインカラーに携えたトロンデッキはスタンダード、そしてエクステンデッドでも広く用いられ、GPやPTのTop8でも確認することができた。そしてこのデッキは、今のモダン環境においても成立している。LSVやGerryが、GP Lincolnでこのようなデッキを使い、上位入賞を果たしたのだ。
ジャンドの隆盛に従う、親和、赤緑トロンの増加を受け、一時はこのデッキはメタゲームから退場したものの、禁止改定を受けるにつれ、このデッキに都合のいいメタゲームがまた現れることとなった。Reid DukeがGP RIchmondでこのような青白トロンを使った。
なぜ青白トロンを使うのか。
- 強い。モダンのような広漠なフォーマットにおいては、強いデッキを使うことが求められる。先読みができるのであれば、トリコロールコントロールがいいデッキとなるだろうが、これは自分がいつでも相手より熟練しているという場合以外においてはおおよそ難しいものだと言えよう。しかしながら、青白トロンならば3T目のけちな贈り物によってイージーウィンを成し遂げることもできるのだ。
- 使ってて楽しい。タップインランドを置くタイミング、トロンの枚数、巨大なX呪文を相手に叩きつけ、様々なカードをサーチし、……これらの行動を自分の判断で打ち込むことができるのだ。
- このデッキ相手の練習をしている人が少ない。そのためにけちな贈り物による初見殺しが可能となる。
- メタゲームがちょうどいい。ジャンドの大爆発の魔道士や死儀礼、漁る軟泥、地盤の際などはとても面倒なカード群ではあったが、今やZooが増えたことや、殻に対する相性の良さがメリットとしてあげられる。
- 安い。フェッチランドがとても高い現代において、モダンはとても高価なフォーマットとなる。バーンやソウルシスターズのようなノンフェッチランドデッキをつかうこともできるが、このデッキはフェッチいらずの青コントロールなのだ。安価であるのはとても良いメリットとなってくれることだろう。
重要となるのは青白トロンはトロンデッキではないということだ。確かにウルザトロンを採用こそしているが、あくまで基本は青白コントロールとしての立ちまわりであるがために、トロン成立はそこまで優先すべきものではないのだ。どうして赤緑トロンではなく、青白トロンなんかをつかうの、という質問はこの事実を誤解しているものに由来する。赤緑トロンはトロンのいち早い成立を目指しているが、青白トロンはじっくりと耐え忍び、トロンが勝手に成立するのを待つのだ。とはいっても差し戻しや卑下でトロンを探しだすためにマナ漏出は採用できていないし、無色土地の採用枚数に起因する犠牲を支払うこともあるがそれほど大きな問題とはいえないだろう。
では、それぞれのカードについて詳細に語っていきたいと思う。
カード選択
天界の列柱:このデッキは1T目の行動がそれほどなく、これは良質な青白土地だ。ジャンド全盛期にはこのカードの目的はヴェリアナ殺しだったが今となってはそれほど必要もなく、トリココンほどにこのカードに依存もしていないためそこまで枚数をとる必要が無いが、採用はしておくべきだろう。
啓蒙の神殿:モダンにおける神殿の採用について、検討をしている人は多くいるだろう。このデッキがその採用先の一つとなるだろう。天界の列柱は確かにゲーム終盤において強いカードではあるが、そのころにはもうこのデッキのフィニッシャーも盤面に並んでいることだろう。その点神殿はそのフィニッシャーにたどりつきながらドローの質を改善してくれる、ゲーム序盤における助けとなってくれる。列柱を何枚かこのカードに入れ替えてしまうのも悪く無いと思っている。
トレイリア西部:けちな贈り物でもってくるピン積みカードであり、5枚目の探検の地図。またトーモッドの墓所や虚空の杯、仕組まれた爆薬や否定の契約にもなってくれるのはとても強いといえるだろう。地図から西部を経由して否定の契約にたどり着く、というやりかたはコンボやコントロール相手に役立つ。
金属海の沿岸:探検の地図で持ってこれる、アンタップインのダメージなし土地は1枚はいるかもしれないが、おおよそ神聖なる泉よりは弱い。2つめの色マナがタップインではいるかどうかはゲームを決める要素となってしまうことだろう。
フェッチランド:フェッチランドはとても有用だ。月対策としての基本土地探しにもなるし、神聖なる泉をもってくることで機を見た援軍を最高の状態でプレイできる。
探検の地図:思考停止で4枚積みたくもなるが、印鑑で色マナがある程度確保できるし探検の地図に頼らずともある程度土地を揃えることはできるだろう。無色土地で手札がいっぱいだったとしても印鑑で強引にゴリ押すことはできるし、避けたいのはどちらかというとランド、地図の引きすぎによるマナフラッドだろう。たしかに地図から西部のような土地にアクセスすることもできるが、その枚数はプロの間でも枚数が異なっている。Reidは2枚、LSVは3枚、Gerryは4枚の採用となっている。個人的には引き過ぎでもいいだろうと思っており、4枚でいいと思っている。
発展のタリスマン:印鑑4枚までは固定として、5枚目が欲しかった。3T目けちは簡単にゲームを決めることができるだろう。そのためにスロットを割くのは十分にリターンがあるリスクだ。
けち屈葬:このコンボは野良からトーナメントまで、幅広く見られるコンボであり、簡単に相手を殺すこともできる。エリシュ・ノーンやイオナ、また赤緑トロン相手のテラストドンも確かに素晴らしいが、Zoo、スケシ、トリコ相手の隔離するタイタンも選択肢として上がることとなる。
差し戻し/卑下:コンボから自身を守り、デッキを掘り下げるのがこのデッキではじめにすべきである行動だ。差し戻しはターン中に複数回行動したい時にはベターとなるが、ヴェリアナ、トラフト、総督、ヴェンディリオン、殻などのパーマネントデッキへの回答となる。占術によるデッキ掘りにより、よりよいハンドを手に入れることができる。Reidは差し戻しをしばしば2枚サイドボードしており、これは先手で強いカードであり、手番によっては必要ないと思うこともあるだろう。ジャンドのようなデッキ相手ならばダイスロールに強く影響を受けることとなるだろう。
撤廃/忘却の輪/勾留の宝球:置物対策のカードであり、流刑によって殺されないようなカードは必要だ。
審判の日/神の怒り/至高の評決:この手のマスデスは嫌いなのだが、殻や親和、Zoo相手を考えるにその価値は地上げざるを得ない。正直、Zooに対してはピン除去のほうが強いと思っているし、殻はマスデスを生き残るクリーチャーが多量にはいっている。そのためこのカードは親和相手のカードだと思っている。親和相手ならその程度でおおよそ十分だろう。至高の評決はべつに4T目に打ちたいものではなく、どちらかというならばけちから有毒の蘇生・神聖なる埋葬を持ってくるほうがベターなように思う。また、アカデミーの廃墟による使い回し、双子対策を考えると忘却石も選択肢として上がることだろう。
機を見た援軍:このカードは思っている以上に強い。このカードのZooに対する強さは言うまでもないが、トリココンに対しても強いといわれると若干疑問が残ることになるだろう。まあたしかにサイド後は削るカードにはなってしまうのだが、1G目においてはいい切り札にもなりかねない。相手のバーン戦略に対してこのカードがフィットすることとなる。また、殻をひかなかった殻デッキは盤面に多量のクリーチャーを並べ、こちらを殺そうとしてくる。この動きに対してもこのカードをぶっさす事ができる。これで時間稼ぎができるのだ。おそらくこのカードを最大限に活用できるのはこのデッキだろう。そして、この理解こそ、このデッキを使いこなすための重要な鍵であるのだ。あくまでこのデッキは相手をコントロールしきるデッキではなく、コントロール要素を多大に含んだコンボデッキなのだと。そしてこのカードのマナ酵素てゃほんとうに素晴らしい。白含みの3マナはこのデッキの動きにとても良くあっているのだ。3T目に差し戻しを構えながら探検の地図を広げ、4T目にトロンを成立させながらこのカードを叩きつける。時間稼ぎには十分なタイミングだろう?
瞬唱の魔道士/有毒の蘇生:このカードによって、けちな贈り物は屈葬の儀式なしでもその力を大きく伸ばすことができるようになる。瞬唱/有毒/足りないトロン/サーチと持ってくることで確実にそのカードを手に入れることをできるわけだ。まあ引いてしまうこともあるだろうがそれは別に問題なく、特にサイド後に解呪や粛清、否認、援軍を使い回すことができるのは十分なメリットだといえるだろう。また、有毒の蘇生は単一では単なるアドソンカードであるがために、機を見た援軍のようなすぐにアドバンテージを取り返せるようなカードなどに対して使うべきカードとなるだろう。また、瞬唱や証人、PiFなどとのインタラクションも見逃せない。
ウギンの目エムラ/アカデミーの廃墟隷属機:ウギンの目は探検の地図でサーチできることもあり、刺したくなる気持ちもとても良くわかる。しかしながらエムラクールはその時が来るまでは手札に来てしまえば死に札となってしまうのだ。一方で精神隷属器はより早くコンボを達成することができ、廃墟によってはワーム、隔離タイタン、呪文滑り、倦怠の宝珠といったカードをぶん投げることもできるだろう。両方を使うこともできるが、スペースの圧迫になるしエムラはサイドで眠っていてもらうのがいい可能性が高い。といってもサイド後のコントロールデッキはもっとアグレッシブになってくるだろうが。前述のとおり、アカデミーの廃墟のほうがフィニッシャーにも繋げやすいことを思うと、こちらに軍配が上がるだろう。
ワームとぐろエンジン:ジャンドだらけの頃、このカードは必須だった。しかしながら今や流刑への道が跋扈するメタゲームであり、ジャンドはその数を減らしている。確かにトップして強いカードではあるが、赤緑のそれほど手放しで入れるべきカードではない。
カーン:このカードも赤緑ほど強いカードではない。どうしてもトロン成立が遅くなるためにコストが高いだけの名誉回復となってしまうこともある。またもしトロンが早期成立するのならば別の手段で勝つこともできるだろう。
スフィンクスの啓示:たしかにこのカードは強い。だがこのカードは本当にこのデッキに必要だろうか?軽量ドローに優れ、脅威となりうるカードも多量に入っている、そして無色土地が大量にある中で色マナを3つも捻出する必要がある。……確かに使えないこともないけれどもそのときには印鑑やタリスマンをもっと増やす必要があるだろう。
サイドボーディング
このデッキにおけるサイドボーディングはフィニッシャーの再選択にほかならない。そしてまた、相手に干渉するための軽量呪文の再選択も行われることだろう。Zooに対しては四肢切断。ジャンドやストームに対しては粛清、コントロール/コンボに対しては打ち消し……。相手のデッキを意識した動きが必要となる。白いデッキは石のような静寂を入れてくるだろうから精神隷属器や地図は枚数を減らすことになるし、双子対策としての倦怠の宝珠は古えの遺恨で割られるだろうから抑制の場や亡霊の牢獄といったカードにすべきだし、トリコはヴェンディで攻め立ててくるだろうから打ち消しよりは除去が必要だろう。
また、けちな贈り物はその再構築性を大きく高めることとなる。強いカードを持って来る方がいいのは確かだが、山札をより強くするためにわざと弱いカードを投げ捨てるというのも一つの選択となる。神の怒りと審判の日は仕事がほぼ同じであるが、そのちょっとした差異がゲームを決めることもある。おおよそのけちは単に屈葬ノーンを決めるためのものではあるが、他のプランを考えるべきタイミングも多くある。例えば神の怒りとハーキルの召還術を使うにしてもハーキルは手札に引き入れたいだろう。
プレイする上でのヒント
このデッキを使うときには今まで以上に土地の置き方に気をつける必要があるだろう。例えば啓蒙の神殿、ウルザの鉱山、ウルザの塔、探検の地図、卑下、けちな贈り物、流刑への道と引いてきた時にはおそらく神殿をおいてしまいたくなるだろう。そうしてしまえば地図は2T目となり、卑下が2T目に打ないものの、トロン成立はほぼ容易に達成できる。一方で3T目に卑下を売ってしまえば次のターンにはトロン成立やけちのキャストは難しくなるだろう。
一方で卑下を構え続けて3T目に地図を置くという方法もある。神殿からゲームを始めることによって、占術を行い、魔力炉や印鑑を探すこともできる。では機を見た援軍は残すべき……?未来の展開を見据えた手札を作る必要があるだろう。もし無色の重いカードで手札が溢れているならばトロンを探しに行くのが正着となる。
また、適切な贈り物によって相手を殺しにかかることもできる。なんだかんだトロン成立は避けたいものであるがために、足りないトロンパーツをうまく使えばけちな贈り物が実質的なサーチカードになるのだ。Zoo相手のけちで流刑、援軍、トロン、地図という4枚を提示すればトロンと地図を選ばざるを得なくなり、重いカードがないことを祈るほかなくさせることができる。流刑が手札にあるときにもわざとそれをすることで必要なパーツを手札に入れることができるのだ。うまく選ぶことでよりハンドを充実させることができる。
トロン土地を破壊してくるときにはおおよそ塔から破壊されていく。そのためにもしトロン成立後に地図があるならばよっぽどのことがない限り残り少ないものをサーチしておき、土地破壊や広がりゆく海に対応できるようにしておくべきだろう。
機を見た援軍を打つときには相手の土地やカードに多少気を配るべきだ。Zoo側がフェッチショックをきめたり、自分に火力を打ったりすることでわざとライフを減らし実質このカードを打ち消すということは十分可能であり、また殻デッキも呪文滑りやレッドキャップを使ってくる。またクリーチャー数についても同様のことが言えるために十分に注意を払う必要があるだろう。
また、色マナつぶしがこのデッキの致命傷になる。多くのスペルを唱えようとしたとき、必要なのは無色土地ではなく色土地である。それに不足してしまえば簡単に負けてしまうことだろう。とくに双子相手ではこの色土地枚数によるプレッシャーのかけ方が大きく変化することになる。青マナ探しのためにうまく知識を渇望していくべきだろう。
そして土地関連について、血染めの月を恐れているプレイヤーも多くいるが、基本土地の枚数や印鑑の枚数を考慮するにおおよそ対処は十分に可能だろう。ただキルターンが増えてしまうという問題があり、出来る限り回答を早く見つけるべきである、という点は変わらない。
そして現在ぼくがつかっているリストは以下のとおりだ。
24 Lands
1 Celestial Colonnade/天界の列柱
2 Temple of Enlightenment/啓蒙の神殿
3 Hallowed Fountain/神聖なる泉
1 Seachrome Coast/金属海の沿岸
1 Scalding Tarn/沸騰する小湖
1 Island/島
1 Plains/平地
1 Tolaria West/トレイリア西部
4 Urza's Tower/ウルザの塔
4 Urza's Mine/ウルザの鉱山
4 Urza's Power Plant/ウルザの魔力炉
1 Academy Ruins/アカデミーの廃墟9 Artifacts
4 Expedition Map/探検の地図
4 Azorius Signet/アゾリウスの印鑑
1 Talisman of Progress/発展のタリスマン9 Gifts Package
4 Gifts Ungiven/けちな贈り物
1 Unburial Rites/屈葬の儀式
1 Elesh Norn, Grand Cenobite/大修道士、エリシュ・ノーン
1 Iona, Shield of Emeria/エメリアの盾、イオナ
1 Sundering Titan/隔離するタイタン
1 Mindslaver/精神隷属器18 Spells
4 Thirst for Knowledge/知識の渇望
3 Condescend/卑下
2 Remand/差し戻し
4 Path to Exile/流刑への道
1 Dismember/四肢切断
2 Repeal/撤廃
2 Timely Reinforcements/機を見た援軍
Sideboard
1 Wurmcoil Engine/ワームとぐろエンジン
1 Snapcaster Mage/瞬唱の魔道士
1 Wrath of God/神の怒り
1 Day of Judgment/審判の日
1 Dismember/四肢切断
1 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
1 Negate/否認
1 Mana Leak/マナ漏出
1 Pact of Negation/否定の契約
1 Venarian Glimmer/ヴェナーリアの微光
1 Hurkyl's Recall/ハーキルの召還術
1 Disenchant/解呪
2 Celestial Purge/天界の粛清
1 Ghost Quarter/幽霊街
今まで触れてきていなかったカードについて、簡単に解説しておこう。
- 隔離するタイタンはワームとぐろエンジンに比べ双子、殻、トリココンに対して有利になりやすいカードとなる。75枚の中に入れておきたかった。
- マナ漏出はけちの選択肢として増やしたかった。まあおおよそ差し戻しや卑下のほうが強い。
- ヴェナーリアの微光は変わったカードだと思う。しかしこのデッキのようなマナが伸びるデッキであればとても強いカードとして動いてくれると思っている。
- 幽霊街はサイド後のミシュラランド対策として採用している。また印鑑やタリスマンととともに25枚めの土地ともなる。
これで以上となる。Reid Dukeがこのデッキについて、このようなことを述べている。
青白トロンが最強だとは思っていない。つまり使い手と使い方によって大きく左右されうるデッキであり、改善の余地が多量にあるということだ。頑張ってより良いデッキを作っていくべきだろう。
また、Gerryの記事も参考になるだろう。
StarCityGames.com - Chasing Platinum: Grand Prix San Diego
StarCityGames.com - Modern Tron Primer
StarCityGames.com - Ninth At Hoth
読んでくれてありがとう。