アブザンの使い方(Modern Abzan Deck Guide By Willy Edel)
より。
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GP Pittsburghにおいて、僕はアブザンを使っていた。すべての道はアブザンに通じていたのだ。僕はずっとアブザンを使っており、去年のディグ宝船殻まみれの世界選手権でも使っていた。そんな僕が、今回のメタゲームはアブザンに最適なものだと思ったのだ。
デッキリスト
25 Lands
2 Ghost Quarter/幽霊街
2 Twilight Mire/黄昏のぬかるみ
2 Overgrown Tomb/草むした墓
1 Godless Shrine/神無き祭殿
1 Temple Garden/寺院の庭
1 Shambling Vent/乱脈な気孔
2 Stirring Wildwood/活発な野生林
2 Windswept Heath/吹きさらしの荒野
4 Marsh Flats/湿地の干潟
4 Verdant Catacombs/新緑の地下墓地
1 Plains/平地
1 Forest/森
2 Swamp/沼14 Creatures
4 Tarmogoyf/タルモゴイフ
2 Scavenging Ooze/漁る軟泥
2 Kitchen Finks/台所の嫌がらせ屋
4 Siege Rhino/包囲サイ
2 Tasigur, the Golden Fang/黄金牙、タシグル22 Spells
3 Lingering Souls/未練ある魂
4 Inquisition of Kozilek/コジレックの審問
3 Thoughtseize/思考囲い
4 Liliana of the Veil/ヴェールのリリアナ
1 Maelstrom Pulse/大渦の脈動
3 Path to Exile/流刑への道
4 Abrupt Decay/突然の衰微Sideboard
4 Fulminator Mage/大爆発の魔道士
2 Kitchen Finks/台所の嫌がらせ屋
2 Painful Truths/苦い真理
2 Stony Silence/石のような静寂
1 Maelstrom Pulse/大渦の脈動
1 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
1 Sigarda, Host of Herons/鷺群れのシガルダ
2 Damnation/滅び
そう、61枚だ。ここで読むのをやめる読者は半分はいるだろう。残りのみんなが読む気力をとりもどすまで、ちょっとまとうじゃないか。
たしかに、61枚デッキはいいものではない。基本的にしてはならないだろう。
「それじゃ、なぜ、そんなデッキを組んだかって?」
端的に言うと
僕は馬鹿だからさ。
では詳細に語ろう
61枚目は土地だ。プレイテストの間は土地24枚で運用していたのだが、ヴェリアナやキッチンを3T目に場に送り出せず負けるという経験を何度も積んでいた。また、サイドボード後には滅びやシガルダといった重いカードを使うプランをとっており、マナ基盤の安定性が必要となったのだ。
好都合にも、白黒ミシュラランドによってこの問題は解決されることとなった。GP2日前にこの構築にたどり着いてからはこの構築が大好きになった。実際に動きは良くなったし、切るべき61枚目についてはギリギリまで思考を巡らせたものの適切な答えが見つからなかった。
というと少し嘘になる。パソコンを忘れたためにプレイテストが不可能だったのだ。そうして76枚のリストを提出したのだ。誰か気づいてくれるかなと思っていたが現実はそう甘くもなかった。
実際のところおそらく除去かハンデスを1枚サイドにおとし、仕組まれた爆薬かキッチンを抜いておくべきだったのだろう。
しかし、そんな61枚のデッキであっても、このデッキは素晴らしい動きを見せてくれた。11-4(3bye)という成績を、11種ものデッキ、ジェスカイ、アブザン、グリセルシュート、白黒トークン、スケープシフト、ジャンド、バーン、親和、ストーム2回に対して収めることができた。
事実と考察
僕の負けはジャンド、アブザン、ジェスカイ、そしてスケープシフトに対してのものだった。
僕はミラーマッチに負けてしまうのが大嫌いだ。緑黒系のデッキがトップメタとなるだろう場合にはミラーマッチ対策を怠らず、そのような場合にはバーンやトロンは、たとえ不利であることをわかっていてもそれを無視する形のサイドボードを組んでいた。そのようなデッキにであれば、無論負けてしまうだろう。しかしながらそれは同時に、他のデッキには絶対に負けないという意味でもあったのだ。
しかしながら、PT運命再編より、トーナメントシーンはガラリと変わることとなった。バーンが僧院の速槍によりプレイアブルなものとなり、護符コンが急成長をと出たのだ。グリクシスカラーが瞬唱ジェイスコラコマによってジャンドのような力をつけ、トロンがウギン、ウラモグを獲得したのだ。
そんなこんなで、僕は土地破壊、ライフゲインの手段をデッキに入れざるを得なくなり、また、瞬速の血編み髪のエルフにも対応しなくてはならなくなったのだ。そのためにミラーマッチ対策を切り捨てることとなった。自身の知識という最強のカードはあったものの、それでもミラーマッチの勝率は80%から55~60%へとその数字を大きく落とすこととなった。
このサイドボードの決断は、Pittsuburghでのミラーマッチにおいての地獄を構成したのだ。マリガンを何度もすることとなり、それでもマナ基盤はぼろぼろだった。そう、逆に言えばこれこそが緑黒デッキのあり方とも言えるのだ。
ジェスカイに負けた理由は正直定かではないが、その時にはケラノスへの解答は携えていたように思う。青赤系のデッキは今やほぼすべてがケラノスを採用しており、天界の粛清を抜いてしまったために苦戦を強いられることも何度もあった。このエンチャントを除去できなければそれだけで死んでしまうのだ。
スケープシフトもまた、負けたくないデッキである。少なくとも、青赤緑の古典的なものならば。手札破壊や土地破壊、ヴェリアナによっておおよそ相手を殺すことは容易である。しかし今回上位入賞した赤緑型のスケープシフトは多くの基本土地、ヴァラクート、マナ加速を持っていたために、ハンデスがそこまで有用に働いてくれなかった。1G目こそとり、スケープシフトはケアできていたものの、原始のタイタンに対応できず、そのまま負けることとなった。
12試合のうち、11のマッチでは1G目を勝利することができた。このために、メインデッキは環境に対してとても合理的なデッキを組めていたのではないかと思う。しかしながら、グリセルシュートやスケープシフト、ストームへの解答が乏しかったために虚無の呪文爆弾をデッキから取り除いてしまったことを後悔した。Bye明けのグリセルシュートとの対戦はとてもつらいものだった。
過去の記事において、緑黒系のデッキを組むときには75枚のデッキとして組めと述べたはずである。これはメインデッキに不利なマッチアップへの対応策を準備せよというものではなく、様々なデッキで役立つ丸いカードをつっこんでおけ、というわけだ。
例えば、対バーンについてはデッキリストを見る限りアブザン側が勝利すると考えている。軽量除去や軽く巨大なクリーチャー、そしてライフゲインに優れている。しかしながら一般的なアブザンのリストでは未練ある魂をフル投入しているがゆえにキッチンを採用できず、またタシグルも1枚だけの採用にとどまっている。そしてライフゲインはサイドボードに積まれているだけとなるのだ。しかしそれはおおよそ、0-1の状態からゲームを始めるというのと同義であり、ちょっとドローがわるくなってしまうだけで0-2となってしまうこともあるだろう。バーンデッキはこの頃さらなるバリエーションを持つようになってきた。緑をタッチしたり、黒をタッチしたり、Zooのようにしてみたり……。しかしそのいずれに対してもキッチンは切り札となってくれるのだ。また消耗戦を強いてくるようなデッキに対してもこのカードはもちろん強い。だからこそこの丸いカードをメインデッキに採用しているのだ。
覚えておいてほしいのはデッキいじりをする際に、タルモゴイフのような枚数を減らしてはいけないようなカードはもうないということである。ヴェリアナ、未練、衰微、サイ、ボブ……どのいずれも4枚フル投入する必要はない。2~3枚の採用に留めることによって環境に合わせる事もできるのだ。環境に最も適した75枚のリストを作製すべきであり、それに不必要なものは抜いてしまっても問題にはならないだろう。
Q&A
苦い真理の採用理由は?
多くのゲームにおいて、このデッキは消耗戦を戦うこととなり、ちょっとしたアドバンテージ差で勝利をおさめることとなる。闇の腹心が場にいればそれは比較的容易いだろうが、この稲妻だらけの環境においてはそのようなイージーウィンは狙えないと言ってしまっていいだろう。そのために対アグロ戦においてボブは有用ではないと言える。またキーカードであるヴェリアナ、土地の運用方法をきちんと理解していればそこまでドローに気を配る必要もそうないだろう。
しかしながら、それはサイドボード後には大きく変化することとなる。多くの死に札が取り除かれる上、マッチアップによってはデッキの形が大きく変化する可能性もある。
過去にはチャンドラや調和、骨読み、前哨地の包囲などを試してきたが、必要だったのは軽く、破壊されず、効果的である、というものだった。その需要に苦い真理はちょうど適していたのだ。
ボブは容易に除去される2/1の生物であり、その利益を受けるためには3Tはかかると言ってもいいだろう。前哨地の包囲、チャンドラについても同様に言える。
では、骨読みより優先された理由は何か。占術2からの2ドローのほうが単純な3ドローより強いと考えるプレイヤーも多くいるだろう。しかしその議論は往々にしてメインデッキ戦、つまり死に札が多いゲームにおいての話なのだ。サイドボード後においては死に札は存在せず、どのようなカードでも引いて嬉しいものとなるだろう。土地に関しても引けば引くほどマナ基盤の安定化、それに由来するミシュラランドの容易な起動や呪文のキャストを可能とさせてくれることだろう。
レガシーをプレイしていれば、断片なき工作員と祖先の幻視の組み合わせはとても強いということは容易に知り得ることである。苦い真理はそれを1枚だけで成し遂げてくれる1枚コンボであり、あえて言うならばライフをガリガリ削ってしまうという問題があるくらいだ。(とは言えこのフォーマットではそれは大いに問題とはなるのだが。)
また、もしチャンドラを使っていたプレイヤーがいるのならば、それをオブ・ニクリシスに変えてしまうのもいいだろう。スピリットトークンへの対応力は落ちるものの、カードパワーは高いだろう。
乱脈な気孔、活発な野生林、樹上の村……さらに無色土地まで?
樹上の村は素晴らしいカードではあるが完璧ではない。緑マナしか出せないという弱点はこの黒シンボルだらけのこのデッキにおいて問題となる。また、白いカードも多量に使いたいために、緑マナが更に少なくてもいいこのデッキにおいてはこれ以上使えるように思えない。
野生林と気孔に関しては、稲妻に耐え、墨蛾をブロックできるという点において野生林の方に軍配があがるものの、黒が出せないというのは問題ではあった。OGWにおいて緑黒ミシュランがでれば、どのような性能であってもおそらく使用することとなるだろう。
少々誇張してしまった点もあるが、僕の、呪文を打ち切ってからミシュランを使うという考え方から気孔を試してみた。それが大当たりだった。マナ基盤を改善してくれただけでなく、ゲーム後半でのアタッカーともなり、またそのライフゲインは想像以上のものであった。この作用を加味して、2枚目の投入を考慮したいと思う。この構築においては緑マナ、黒マナ源を18枚、白マナ源を15枚は採用していたい。
また、無色土地についてもよく聞かれる。ガヴォニーの居住区は良いカードではあるが、今回は採用しなかった。ミッドレンジが多い環境においてはこのカードは輝くが、アグロだらけの今の環境ならば必要はないだろう。
大天使の霊堂にも同じようなことが言える。絆魂、接死の付与は素晴らしいし、ガヴォニーより役立つとは思っているが、現状は土地破壊のほうが強いといえるだろう。
地盤の際は大好きなカードで、おおよそ緑黒系のデッキならば相手に4枚の土地が並ぶのは確実であるがために、ミラーマッチだけでなくスケープシフトやジェスカイ相手などにも有用に使えるカードだった。しかしながらメタの変遷とともにこれの起動すら許してくれないマッチアップが数多く存在するようになった。
そういうわけで幽霊街をピックしたのだ。このカードは親和や感染、護符コンに対して素晴らしい働きをしてくれる上、血染めの月に対する回答ともなってくれるのだ。単に脳死しているわけではないと言っておこう。
そして最後に、黄昏のぬかるみ2枚目よりかは森林の墓地のほうが強いカードとなると、完全に確信を持って言えているわけではない。あくまでこれはお試し枠にすぎないとはいえる。
丸いカード丸いカードというわりには、大爆発?なんで?
実際は僕もこのカードはあまり入れたくない。しかし護符コンに対応するためにはいれざるを得なかったのだ。もしトーナメント環境を考慮するつもりならば、おそらく当たることとなるだろう。また、スケープシフトもちゃっかり対策できるのはいいことだろう。
このカードを親和や感染相手にも投入していると聞くとかつては馬鹿じゃねえのといわれたり目をそらされたりもした。しかし今となってはある意味常識となったと言ってもいいだろう。土地への攻撃もできる脅威となったのだ。これは同様のことを天界の列柱相手に言うこともできる。空中戦を強いてくる上に除去も通らない、また未練ある魂でチャンプするしかなくなるカード相手への対抗策となるのだ。感染は使徒の祝福や歪の一撃を使ってくるし、親和側も鞭打ち炎や集団疾病、霊気格子を使ってくる。もし大爆発をサイドインするのならば、1〜2枚で満足してはいけない。
オール・インせよ。
このカードは血染めの月を入れてくるような相手にも役立つ。例えばこちらの基本土地がほぼない時だ。ストームやグリセルシュートが血染めの月頼みのキープをしてきた時に有用な手段となる。単なる3マナ2/2のカードでこそあるが、ヴェリアナのサポートによって十分なクロックとなってくれるのだ。またバーン相手にもリリアナの代わりにサイドインすることがある。ブロッカーにもなってくれるし、最悪僧院の速槍あいてのチャンプブロッカーともなってくれる。緑白マナが若干不足する状態でもなんとか勝ちを引っ張りだすことができた。あくまでこの戦略は包囲サイをキャストするまで生き残りたい、という思いが大きい。その場合、特に後攻の場合において、このカードはヴェリアナよりも強いカードとなるのだ。
そして最後に、このカードを脳死で入れてはいけない。ジャンドを使うプレイヤーはコラコマとのループを目的としてこのカードを投入しているが、僕はそれをあまり好んではいない。基本土地をフェッチしてくることは十分に可能だし、ゲーム後半の大爆発の魔道士は思考囲いと同値レベルの弱いカードとなるだろう。
ミラーマッチで投入する理由
- ハンデスを抜きたいが他に入れたいカードがない
- 相手がガヴォニーを採用しており、それへの対抗策が3枚程度しかない
- 先手でボブを採用しており、アグロ戦略でいきたい
- むっちゃ早く勝ちたい。マナスクリュー起こさせてゴリ押ししたい。
シガルダ?
ミラーマッチにおいて、特に対ジャンドにおいて強力なカードだ。青いデッキに対してはスラーグ牙より弱いカードとはなるがそれでもなお強い。また、死せる生相手にもこのカードは有用である。墓地対策なしにあのデッキに対応できるのは素晴らしいことといえる。カード効果をよく読むといいだろう。
なぜジャンドではなくアブザン?
これを説明するだけで1記事はかけるのだが、今回は要点だけかいつまんで説明することとする。その理由となるのは流刑への道、包囲サイ、未練ある魂だ。
ジャンドには稲妻やコラガンの命令、そして黒割れの崖という強力なマナ基盤がある。しかしながらこれらのカードは現在のメタゲームにはマッチしていないように思うのだ。これらのカードを、瞬唱/ジェイスよりタルモ/軟泥を主体としたデッキで使いたいという理由はあるのだろうか?おそらく単なる意地といってもいいだろう。このカードを使いたいのであれば、おそらくグリクシスのほうが強いデッキとして仕上がってくれることだろう。
貴族の教主はお嫌いですか?
いいや、DrSの禁止以来、その後釜となるカードを僕も探してきた。その後釜として貴族の教主が当てはまらなかったというわけだ。このカードは黒マナを出してくれないために、もしできるならこのデッキが行いたい2T目リリアナ/大爆発という動きをあまり援助してくれないのだ。たしかに賛美の能力は強いが、稲妻や全体除去により容易に倒れてしまうのは評価しづらい。
また、たしかに序盤では強いカードではあるものの、このデッキはミッドレンジであり、むしろ中盤、終盤に引き入れたら弱いカードは出来る限り排除したいのである。
今日はここまでだ。デッキ構築などについては過去の記事で触れているし、最後の調整はメタゲーム次第となるため、自分で行うべきだろう。
また、来週にはPTOGWにむけての最高のデッキを紹介したいと思う。
そして、JUNDINATORのアップデートをしたいと思う。今までの機能はそのままにサイドボードについてや最新の禁止リストを考慮し、最高のジャンドを作る手助けとなるうえ、ヴェリアナの使い方も学べるだろう。
もし、疑問点があればぜひ聞いてほしい。