MtG訳記た。

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究極のバントエルドラージ(The Ultimate Guide To Bant Eldrazi By Ben Friedman)

The Ultimate Guide to Bant Eldrazi by Ben Friedman | GatheringMagic.com - Magic: The Gathering Website

より。

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 (記事執筆当時)もうすぐカラデシュスタンダード環境が始まる。ギアハルクやチャンドラと言った様々なカードに目移りが止まらないだろう。(以下しばらくスタンダードの話が続くため省略)

 レガシーデルバーにおける瞬唱や英雄バントでのデンプロや占術土地、白黒ミッドレンジにおけるエレボスの鞭とオブゼダートのコンボといった、ちょっと重たいカードを入れることによって消耗戦に耐えられるようにする、という風潮は今バントエルドラージにも訪れ、作り変えるものや永遠の証人の枚数にそれが現れることとなった。

 ということで世間はスタンダードにお熱なのかもしれないが僕はそれを無視してバントエルドラージの話をしたいと思っている。モダンはかつてよりは流動性が少ないフォーマットへと変貌を遂げ、またPTフォーマットの復帰も望まれるようになってきているのではないだろうかと思っている。実際にPPTQもスタンダードのときと同じくらい開催されており、RPTQも同様のことが望める。もしモダンをよく知らない人であっても、このガイドさえきちんと読んでいればこのやりこみフォーマットであるモダンだったとしても勝ち抜くことは難しくないのである。

 では、リストを見てもらおう。

Bant Eldrazi

Ben Friedman

Creatures
1 Birds of Paradise/極楽鳥
2 Eternal Witness/永遠の証人
3 Eldrazi Skyspawner/空中生成エルドラージ
4 Drowner of Hope/希望を溺れさせるもの
4 Eldrazi Displacer/変位エルドラージ
4 Noble Hierarch/貴族の教主
4 Reality Smasher/現実を砕くもの
4 Thought-Knot Seer/難題の予見者
Spells
4 Path to Exile/流刑への道
4 Ancient Stirrings/古きものの活性
2 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
Lands
1 Plains/平地
2 Forest/森
1 Breeding Pool/繁殖池
1 Hallowed Fountain/神聖なる泉
1 Temple Garden/寺院の庭
3 Brushland/低木林地
3 Yavimaya Coast/ヤヴィマヤの沿岸
4 Cavern of Souls/魂の洞窟
4 Eldrazi Temple/エルドラージの寺院
4 Windswept Heath/吹きさらしの荒野
Sideboard
2 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
4 Stubborn Denial/頑固な否認
2 Disdainful Stroke/軽蔑的な一撃
2 Stony Silence/石のような静寂
2 Rest in Peace/安らかなる眠り
1 Worship/崇拝
2 Blessed Alliance/神聖な協力

  今回の構築はRGヴァラクートをメタったものである。その煽りを受けて安らかなる眠りが少なくなってしまったためアブザン、ドレッジには弱くなっている。墓掘りの檻を取るために打ち消しや神聖な協力、崇拝を削ってもいいだろう。崇拝はミラーマッチやバーン、SCZ、親和(墨蛾を除く)、また呪禁オーラやエルフ、ドレッジやマーフォークを狙ったものである。ドレッジ側が自然の要求を積んでくる可能性を考慮しても、入れておいて損することはないだろう。また、75枚の中に呪文滑りを入れておくことで、変位エルドラージと組み合わせてミラーマッチを制することができるようになる。とは言え仕組まれた爆薬もミラーマッチなどで古きものの活性からサーチできる除去として使うことができるだろう。 

 墓掘りの檻と安らかなる眠りのどちらを取るべきかについては長らく議論の的となっていたが、今はアブザンがカンパニー型ではなく、剥ぎ取りタルモのミッドレンジが主体となっていることを考慮するに、眠りのほうが強いと思っている。とは言え古きものの活性によって探し出せる、ドレッジに対して強い、という利点を踏まえるならば、もし調べ、カンパニー、異界の進化を使ってくるデッキが多いと予想できるならば墓掘りの檻を取るのも悪く無いだろう。また、アブザンミッドレンジやストーム、死せる生が多いと予想できるのならば眠りに軍配があがることとなる。とは言えRiPと永遠の証人や作り変えるものとの相性の悪さを覚えておくのも重要となる。タルモや剥ぎ取り、ボブを使ってくるデッキに対しては仕組まれた爆薬も搭載されると思うが、それでRiPを破壊してしまうことを恐れる必要は何もない。ボードを綺麗に殲滅することが重要となるのだ。結局のところ今のところ、墓掘りの檻のほうがメタゲームにそぐっているとも思っているが、メタゲームに応じてそれは大きく変わることとなるだろう。

 メタゲームに合わせたサイドボードの構築はとても重要である。それぞれのカードの利点欠点をしっかりと把握し、今の相手にしっかりと合わせたカードを使っていくことで勝ちを狙えるようになる。

 例えばヴァラクートがそこまで存在しないメタゲームを想定する場合には軽蔑的な一撃をアグロ向けのサイドボードに変更することが必要となるだろう。実際そのようなメタゲームを想定するならばサイドボードはこのように変わる事となる。

2 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
4 Stubborn Denial/頑固な否認
2 Stony Silence/石のような静寂
3 Rest in Peace/安らかなる眠り or Graffdigger's Cage/墓掘りの檻
2 Worship/崇拝
2 Blessed Alliance/神聖な協力 

 以上がサイドボード構築の話となる。続いて、このデッキに置いて一番重要なマリガン、3マナ域、サイドボードガイドについての話となる。本当にモダン環境のデッキ多様性は多岐にわたり、青赤昇天からランタンコンに至るまでそのすべてを対策する必要があるのである。

 バントエルドラージの根本を形成するのはマジックの初期の初期にまで遡る、強大なクロックによるビートダウンである。ウギンの目が存在した頃にはスタックス要素まで取り入れており、チャリス、三球、抵抗の宝球といったカードで相手のカードを唱えさせることなくこちらのクリーチャーで殴り倒すという動きを取ってくるのである。かつては徴兵バントで取られていた失われたアラーラの君主とエルドラージの徴兵という動きを実質的に希望を溺れさせるものと変位エルドラージによって達成することができるようになる。たしかにジェイスはいないものの、難題の予見者と現実を砕くものがその代替となってくれる。かつての徴兵バントにおいても、たとえ貴族の教主が除去された場合でも単なるフェアデッキとしての動きができたように、バントエルドラージは希望を溺れさせるものや現実を砕くもの、そして古きものの活性の力によってスローゲームを制することも十分に可能となっているのである。

 ここで重要となってくるのが、対戦相手がわからない状態でどのようなハンドをキープすべきか、というものとなる。徴兵バントならばマナ加速のないハンドはマリガンとなっていた。とは言え聖遺の騎士を含めマナ加速は多量に揃っているためにそれほど困ることもなかっただろう。そしてバントエルドラージに目を移せばマナ加速はそこまで入れる必要はない……というか入れる隙間がないことに気づくだろう。高速デッキの存在数、また瞬唱稲妻デッキの存在数を考えるにマナクリーチャーの生存権は大きく下がってしまっているのである。……知り合いのFrank Vanderwallに意見を求めたところ、ある程度のキープ基準を教えてもらった。それに僕個人の意見を加えた、キープ基準を以下に記しておこう。

 相手がわからない時には、このようなハンドのいずれかならキープすべきである。

  • 唱えられる古きものの活性2枚
  • 寺院と空中生成/変位/予見者ないしそれを探せるカード
  • マナクリと活性、2T目にたたきつけられる3マナクリーチャーないしは3T予見者/砕くものを可能とする土地加速

  

寺院無しの土地3枚、予見者、変位、砕くもの、活性というハンドは特に後攻ではキープしたくない。活性とドローで寺院を見つけることができなければ初動が3T目となるが、そんな動きがモダンで認められるわけもない。

 除去の枚数によってマリガン基準は緩められる。例えば流刑、爆薬、寺院無しの土地3枚、変位/空中生成、証人/予見者というハンドは現在のモダンのメタを考えるにキープするに値するハンドといえるだろう。

 1マリ後にはその基準は少々ゆるくならざるを得ない。例えば1マリ後の手札が土地3枚、予見者、変位、活性というハンドは十分キープできる。もちろんサイド後にはその基準はかわり、ドレッジ相手には眠りを探しに行くだろうし、親和相手には静寂を探しに行くことになるだろう。

 あくまでマリガン基準はそのプレイヤーによって変わってくるものではあるが、もし初心者でちょっとハンドに不安を覚えた時にはおそらくマリガンしたほうが適切であることが多い。

 

 ということでここからは3マナクリーチャーの話に移っていきたいと思う。今回メインデッキには永遠の証人を多めに採用し、作り変えるものを一切採用していなかった。というのも求めているステータスがこれではなかったからだ。確かに作り変えるものはアグロ戦略を取るとき、特に貴族の教主と組み合わせた時には除去耐性も相まって最高クラスのクリーチャーとなる。しかし親和や感染相手での棒立ち性、またミラーマッチでの若干の弱さ、そして環境が流刑を除去の中心とするものへとシフトしていることからその優先順位が落ちることとなる。

 SCGOの結果を見る限り、バントエルドラージ、感染、親和がトップメタとなっているように思う。その点において感染、親和に対抗しやすい空中生成エルドラージが優先的に採用されるカードとなった。また、このカード自身がミラーマッチにおける相手の空中生成エルドラージとの相打ち役となってくれる点もその一因となる。相手の空中生成エルドラージに対応できなければ彼の手によってこちらの命が消えていくこととなる。変位/溺れさせるものによるロックを決めたとしても、空中生成エルドラージを止めるためにトークンをサクり続ける必要があるのは大きな痛手となるだろう。

 ではなぜ証人を作り変えるものより優先しているのか。両方ともに消耗戦に強いクリーチャーではあるが、証人は変位エルドラージと組み合わせることで相手のクリーチャーを流刑の地に送り続けることができ、相手の崇拝を実質腐り札にかえることができるのだ。ニッサの誓いを使い、太陽の勇者を呼び出してくるプレイヤーも居るが、3~4T目に流刑への道を再利用できるようにするほうがおおよそ使いやすい上、6マナという重さは希望を溺れさせるものがマナカーブの頂点であるこのデッキにおいても手放しに評価できるものではない。

 また、永遠の証人ならば爆薬、流刑を使いまわせるために構造的に感染、親和に対して有利を取りやすくなるという点もある。これは作り変えるものには絶対にできない動きであり、親和の飛行部隊や感染の工作員たちを止められないこのデッキにおいてはとても重要な評価点となる。さらに言えばアブザンカンパニー、マーフォーク、エルフに対峙した時の変位証人エンジンの素晴らしさを知ってしまえばもう作り変えるものに戻ることはできないだろう。

 

 そしてお待ちかね、サイドボードガイドについてだ。まずはこれまでの記事で述べてきたことを簡単に要約しておこう。

 高速アグロに対して現実を砕くものは無力だ。バーンの場合にはそれが希望を溺れさせるものとなるが、相手の速度においつけていないというのがその理由の主たるものだ。

 仕組まれた爆薬はトロンやむかつき、RGヴァラには入れる必要はない。

 予見者は親和相手、特に後攻の時には抜けることが多い。この4/4という恵まれたステータスもこのマッチアップにおいては役に立たず、予見者で手札を見る前にその手札はすべて盤面に並ぶこととなる。

 仕組まれた爆薬と石のような静寂はディスシナジーでこそあるが、両方とも対親和においてサイドインすべきカードとなる。どちらも1枚で相手の戦況をボコボコにしてくれるためだ。1T目モックス羽ばたき羽ばたき、2T目からは頭蓋/スカージ/監視者と様々な脅威が叩きつけられてくることを考えれば仕組まれた爆薬がたとえディスシナジーを持っていたとしても石のような静寂とともに採用されるべきものとなるのはお分かりいただけるだろう。もしむかつきやトロンがおらず、静寂が必要ないと思うのならば、代わりに引き裂く突風や忍び寄る腐食を採用しておきたい。

 除去が厚めのデッキに対しては極楽鳥をサイドアウトし、より肉の多いデッキへと中身を変えていくことになるだろう。例えばトリココン相手ならば流刑や爆薬とともに頑固な否認や墓地対策のカードと取り替えることとなる。

 頑固な否認と空中生成エルドラージは血染めの月対策として非常に重要となる。空中生成の生み出すトークンにより月が有る中でも予見者や砕くものを場に送り出すことができるようになるのだ。またフェッチから基本土地をきちんと連れてくることができれば月のおかげで生まれる赤マナを含めX=3での爆薬設置はそう難しくない。とはいえマナ拘束の厳しい証人や溺れさせるもの、砕くものは少々枚数を減らすことになるだろう。とはいえこれも相手のデッキビルドに大きく影響を受ける。青赤デルバーがサイド後月を出してくるのと、赤白ないし青赤ロックデッキが月をおいてくるので

は大違いなのはすぐに想像がつくことだろう。

 モダンには本当に多くのアーキタイプが存在するために、ここで全てについて触れておくことは不可能だろう。とは言えおおよその場合において、こちらが取ることができるゲームプランは3つとなる。

  1. 変位/溺れさせるもので相手をロックする
  2. 砕くもの/予見者で殴り切る
  3. 相手の攻め手を耐え切り、息切れしたところで反撃する

 3番目は親和や感染に代表される、このデッキにとって正直一番つらいマッチアップではあるが、それでもなおこのゲームも勝つことは可能ではあるのだ。

 対戦相手に「2T予見者は禁止だろ!!」と言わせられるように頑張ってみないかい?