MtG訳記た。

モダンを中心とした(というよりはモダンの)海外記事翻訳保管庫

モダン環境のアグロデッキの変化について(The Shifting Face Of Modern Aggro by ROSS MERRIAM)

StarCityGames.com - The Shifting Face Of Modern Aggro

より。

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 双子の夏の死、そしてエルドラージの冬を乗り越え、モダン環境にはまた大きな変化が起こることとなった。双子たちの禁止後すぐには現れなかった変化が、ようやく現れることとなったのだ。

 双子の禁止によって、それによって抑えられていた高速コンボの隆盛が心配されていた。青いデッキが実質双子しか存在しなかったために、コンボ抑制となる打ち消し呪文が相対的にすくなると考えられていたためだ。実際に双子はそのコンボの容易性と柔軟性より、このモダンというフォーマットの始まり以来このてのオール・イン型コンボデッキを咎める役割を抱えていた。

 そして、双子の死後、その役割は高速アグロへと移行することとなった。

 野生のナカティルは2年前に解禁されたものの、すぐにはメタゲーム上にこのカードが現れることがなかった。禁止する必要はなかったのではないか、という声も上がるほどに。……しかし、段々とではあったが、バーンデッキの亜種として、ナヤカラーのデッキの火力として、このカードが搭載されるようになったのだ。

 では、そんなデッキの変遷はどうして起こったのか、そしてそれらに対してどのような対策を取るべきなのか、ナカティルの隆盛は双子と花盛りの夏の死に由来するものなのか、ではなぜ?そうでないなら原因は?……それらについて語っていこうと思う。

双子の禁止が意味することは?

 先述の通り、双子はフォーマット上の高速コンボを咎める存在として働いたことだろう。双子を相手にしたことがあればわかるだろうが、このデッキは高速クロックパーミッションとしても、低速コントロールとしても柔軟に立ちまわることができたのだ。この柔軟性は稲妻瞬唱パッケージから始まったと言ってもいいだろう。

 稲妻瞬唱パッケージは双子を強デッキたらしめるためのパッケージであった。このカードは様々な方法で用いることができたのだ。あるときは相手の脅威の除去、ある時は1マナでテンポを稼ぐためのカード、ある時にはコンボをケアしすぎる相手に対して、総督たちによってちまちま削ったライフに最期を与えるためのカードとして動くことができたのだ。かつ瞬唱の2/1という肉も残る事となる。

 これがナカティルに対してぶっ刺さることとなったのだ。双子は2色デッキであるがために、土地からダメージを受けることもほぼなく、稲妻によってナカティルという最強のはずのアグロカードが完全に沈黙させられてしまう上、それを瞬唱で再利用されてしまうのである。

 これに対して、サイドからドムリ・ラーデや遍歴ペスといったさらなる脅威をかさ増しすることはたしかに可能だ。しかし、そのようなおおぶりな動きは結局双子に対してコンボを許す隙を与えてしまうことにほかならないのだ。そして仮にコンボを決められなかったとしても、長期戦化は打ち消しを構えながらのコンボ開始をより容易にしてしまうものとなるのだ。

 さらにさらに、仮に稲妻や総督が相手の手札にいなかったとしても、瞬唱を始めとした防御線によってナカティルや猿人の攻撃は妨げられることとなり、つまるところZooは圧倒的に双子に対して不利であったのだ。

 ではなぜ、第二のトップメタ、親和はその勢力を保つことができていたのか。それはデッキの爆発力に由来している。親和の持つ爆発力はとても高く、Zooより、そして時には双子より高速に相手のライフを刈り取ることができるのである。

 そして都合のいいことに、親和には感電破があった。総督もやっかい児もこのカードで撃ち落とすことができる上、相手の稲妻を殺す呪文滑りも自然に採用することができるのである。しかしそれですら、親和は双子に不利がつくデッキであり、改善の必要があったのである。

 そしてもう一つ、花盛りの夏の存在、護符コンの存在もZooに対して向かい風となっていたのだ。Zooは護符コンボより遅いデッキであるにも関わらず、対抗手段を何一つとしてもっていないのだ。確かに護符コンは使用者自体そこまでいないものではあったが、絶望的なマッチアップが少しでもなくなればそれは追い風と言っていいだろう。

 そうしてこの2つの安定コンボデッキが消えた今、高速かつ安定なコンボデッキは実質環境から消滅したのだ。ならば、4T目にあいてを殺しきることができ、コンボに対してちょっとした対抗策があるようなデッキでも十分に生存権が認められる事となったのだ。相手が有効牌を引き続ければたしかにそれでも死んでしまうことはあるがそれを恐すぎても意味は無いのである。まあ、もし今後また護符コンのような安定したコンボデッキが生まれることがあれば、このデッキは息をまた引き取ることになるだろう。

新たな仲間

 しかし、この変化だけではなかった。さらなるカードがZooの隆盛に貢献しているのだ。まずはアタルカの命令だ。強力な火力呪文となり、アグロデッキを後押ししてくれることとなった。このカードをバーンに入れてもいいと入ったが、Zooにおいてはより強くなるということは容易に想像できるだろう。2マナ実質6点を1枚のカードで叩きこめ、3Tkillも時には成し遂げてくれるカードであるのだ。さらにはコンボ相手にコンボ成立までの時間を与えないためのクロックとしても成立してくれるのである。

 アタルカの命令はZooに対して、多様性も与えてくれた。単なる頭蓋割りならばZooのようなアグロデッキに対しては少々弱いカードとなってしまうだろう。しかしながら他のモードを持っているがために別のカードとしても働くことができるようになったのだ。

 カードの変化によるクロックの安定性のちょっとした変化と思うかもしれないが、その数%がラウンドを重ねるごとに大きな差として現れるようになったのだ。だからこそ、このデッキは隆盛することとなったのである。

 モダンの環境デッキはいずれも強いカードの塊である。そしてZooにとってのアタルカの命令はこのデッキに親和のような高速性、爆発力を与えてくれたのである。

 そしてもう一つ、このデッキの隆盛に関わっているカードがある。無謀な奇襲隊である。OGWで追加されたこのカードは炎樹族の使者と組み合わせることによってこれまでになかったレべルの爆発力をZooに与えてくれたのである。2T目終了時に相手のライフを一桁にするのも夢ではないのである。そして実際に、このデッキの平均的な動きですらこのようなことができるのである。

  1. 野生のナカティル
  2. 炎樹族の使者→ゴブリンの先達で5点
  3. 相手のブロッカー除去→奇襲隊怒涛→12点 

  1T目に対処ができないだけで一瞬でライフが消し飛ぶこととなるのだ。しかも現実に起こりうるというのが恐ろしいところであり、もし相手のデッキが非クリーチャー依存コンボだったならばブロッカー除去がそのまま本体に飛び20点となる。

 そしてこの炎樹族奇襲隊コンボの素晴らしいところはアタルカの命令との相性の良さがある。奇襲隊と組み合わせることによってダメージは増えるし、相手が返しで神々の憤怒などを打ってきても最期の削りきりとして、このカードは働いてくれるのである。

 そしてアグロデッキ相手においてはフィールド上の壁をなぎ払う存在として活躍してくれる。密林の猿人のような少々弱いカードであっても安定性を失うことなくその能力を底上げし、相手のライフを削る手助けとなってくれるのは大きな魅力となるだろう。

 そしてこのカードの重要な点は別に奇襲隊はバーンにおいてのみ採用されるカードというわけではないというところにある。たとえばJameson Perdueは直近のSCGIにおいてタルモをデッキから追い出し、このカードと大歓楽の幻霊やバーン呪文を用い、古典的なZooというよりかはナカティルバーンとしてこのZooを作り上げたのだ。バーンデッキとしての特性は残しつつ、よりアタルカの命令を強いカードとするようなデッキチューンを見ることができる。そして野生のナカティルとその亜種をデッキ内に詰め込むことによって、安定した1T目のクロック擁立をすることができるのである。

今後のZooがモダンにもたらす影響は?

 モダン環境におけるZooの変化によって、モダン環境がどのように変化したのだろうか。その一つとして如実に現れているのが台所の嫌がらせ屋の増加である。アブザンカンパニーが環境の勝ち組となっているというのもその一端を担っているのはあるだろうが、やはりZoo相手のこのカードの強さは無視できないものがある。

 フルバーン相手ならば2点のライフは正直無視できる範囲と言ってもいいだろう。しかしながら今隆盛しているのは攻撃にその火力を頼る、Zoo型バーンなのである。となるならばこちらが流刑への道を持っていないかぎり、このカードは2回分の壁となり、4点のライフゲインもしてくる忌々しいカードとなってくれるのである。アブザンカンパニーが環境の勝ち組で在り続ける限り、流刑への道は猿人の攻撃を通すために必須のカードと言ってしまっていいだろう。

 そしてもう一つ、親和の使用者が目に見えて減っているのだ。これはZooに対して不利がつくという理由ではないだろうが、親和がアグロデッキとしてメタられすぎているというものがあげられるだろう。

 モダンは実質的なエターナル環境だ。それが故にプレイヤーは特定のデッキに対して極めることが可能となる。そしてアグロデッキの使い手たちは今まで選択肢を持つことができなかったのだ。アグロといえば親和、それがまるで合言葉となっていたのである。しかしながら、もう親和だけを使う必要はなくなったのだ。その多様性によって親和が実質的に数を減らした、ということになる。SCGIにおいても親和はその数を少なくし、ヘイトカード自体もかなり減少したように思う、しかしだからといって親和が以前のような、双子禁止直後のような支配力を持つことはないと言っていいだろう。

 ナカティルは、モダン環境に多様性を投げ込んでくれた。そしてこの頃のトーナメント結果からも非親和アグロデッキの実力を皆に見せつけてくれたといっていいだろう。確かに祖先の幻視や飛行機械の鋳造所が今後どのような立ち位置を確保していくのかは注目していくべきものの一つではあるだろうが、今はただ、ナカティルたちとともに彼らが待機カウンターを減らしきることなく、単なる+1/+2修正をするだけの剣とともに永久の眠りにつくことを楽しんでいようじゃないか。