MtG訳記た。

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今週のデッキ-白黒エルドラージ(Deck of the Week – BW Eldrazi by Sheridan Lardner)

Deck of the Week – BW Eldrazi – Modern Nexus

より。

近頃話題のあのデッキについての考察!

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 2016年、そしてエルドラージ元年へようこそ!クトゥルフの血がいまモダンへと流れこみ、11月のMOLeagueやSCGOpenにおける入賞など、様々な成果を残したこのデッキについて、多くの人が考察し、施行してきている。そしてエルドラージに関わるカードの価格が異様に上昇しているのも見て取れるだろう。僕は今回、このデッキについてフィーチャーしていきたいと思っている。

  また、このデッキについてはSCGにおける入賞をナシとしても様々な考察が行われてきた。グリクシスの神、Michelによるものや、護符コンの生き字引、Chrisによる考察。AriによるVideotechやFrankによる赤黒、MTGSalvationでのデッキ討論も参考になるだろう。もし気になるのならばぜひこれも読んでもらいたい。(そしてウギンの目を安く揃えてもらいたい。)では今回は黒エルドラージの中でも、Top 16フィニッシュを飾ることのできた白黒エルドラージについて語っていくものとする。

デッキリスト

 黒系エルドラージは、おおよそ2~3色で組まれている。MOのデータを見る限り、そして掲示板での議論を見る限りおおよそタッチカラーは赤、白、そしてそもそも黒単という3つに大きく別れるように思えた。

 このタッチカラーについての議論は簡単に終わるものではないだろうが、少なくともMatthewは白をタッチすることで10位へと上り詰めることができた。

BW Eldrazi, by Matthew Dilks (10th, SCG Cincinnati 1/3/2015)

14 Creatures
4 Blight Herder/荒廃を招くもの
4 Oblivion Sower/忘却蒔き
4 Wasteland Strangler/不毛の地の絞殺者
1 Ulamog, the Ceaseless Hunger/絶え間ない飢餓、ウラモグ
1 Spellskite/呪文滑り

21 Spells

2 Expedition Map/探検の地図
4 Relic of Progenitus/大祖始の遺産

4 Path to Exile/流刑への道
1 Slaughter Pact/殺戮の契約

1 Liliana of the Veil/ヴェールのリリアナ

4 Inquisition of Kozilek/コジレックの審問
4 Lingering Souls/未練ある魂
1 Thoughtseize/思考囲い

25 Lands
2 Plains/平地
2 Swamp/沼
1 Bojuka Bog/ボジューカの沼
1 Cavern of Souls/魂の洞窟
4 Eldrazi Temple/エルドラージの寺院
4 Ghost Quarter/幽霊街
2 Godless Shrine/神無き祭殿
4 Marsh Flats/湿地の干潟
1 Vault of the Archangel/大天使の霊堂
2 Eye of Ugin/ウギンの目
2 Urborg, Tomb of Yawgmoth/ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
Sideboard
1 Crucible Of Worlds/世界のるつぼ
2 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
2 Stony Silence/石のような静寂
2 Celestial Purge/天界の粛清
2 Disenchant/解呪
1 Slaughter Pact/殺戮の契約
1 Liliana of the Veil/ヴェールのリリアナ
1 Duress/強迫
3 Timely Reinforcements/ 機を見た援軍

 SCGにおいては、黒単エルドラージも数多くデッキとして使われていた。しかしながらそのX-3というスコアはこの10位入賞には遠く及ばないだろう。僕の分析の結果、白黒エルドラージこそが現在のメタゲームに合致していると思っている。

戦法

 白黒エルドラージはランプ要素を仕込んであるミッドレンジ型のデッキである。実際これが土地コンボだと言いたくなる気持ちも多少わかるが、赤緑トロンや護符コンというよりかは緑黒系のデッキに限りなく動きが近いのである。Dilkはデッキに除去を5枚しか搭載していないが、MOではおおよそ6~7枚が使われている。この部分の違いは大祖始の遺産や未練ある魂に割かれており、またサイドボードのカードも一般的な緑黒系のそれとひどく似ていることに気づけるだろう。不毛の地の絞殺者はミッドレンジ系のクリーチャーとしては素晴らしいものであり、2T目に相手のクリーチャーを除去しながら出て来れば対処するのは難しいと言える。ジャンドやアブザンと類似した、手札破壊と除去による消耗戦の形成がこのデッキの目指す点ではあるのだが、他のミッドレンジと異なるのはこのデッキはマナカーブや土地がいびつであり、一般的なミッドレンジでは採用されないようなマナ域のエルドラージを叩きつけてくるのだ。

 一般的な緑黒系ミッドレンジはタルモやタシグル、包囲サイをもって他のデッキと戦っている。しかしエルドラージの使うカード軍は荒廃を招くものや、忘却蒔きといった、今までよりも重く、巨大なクリーチャーなのだ。しかし、エルドラージの寺院やウギンの目、アーボーグのちからを借りることによって本来支払わなければならないマナを節約し、その気になれば3T目から叩きつけることができるのだ。また、大祖始の遺産や流刑への道、相手の探査クリーチャーが与えてくれる追放カードはエルドラージたちの餌になってくれる。トロンはワームとぐろやカーンと言ったカードをマナランプから繰り出してくるが、こちらのデッキはミッドレンジ型戦略をもってこれらのカードを叩きつけているのだ。

 さらなるトロンとこのデッキの違いとして、丸いというか、除去がトロンほど致命的とならないというメリットがある。今までのトロンは大爆発の魔道士やコラガンの命令に苦しめられてきたが、このデッキならば多少動きこそ遅くなるが完全に動きを封じられるということもない。また、2-3ゲーム目ならば相手はミッドレンジランプ型の動きに対応したサイドボーディングができていない可能性もある。

 そして白黒エルドラージが他のミッドレンジより優れている点として、中盤から終盤の伸びが凄まじいというものがある。ウギンの目のサーチ能力を含め、タルモゴイフを超える脅威が次々と飛び出してくるのだ。たとえウギンの目がなかったとしても大祖始の遺産や探検の地図によってそれは簡単に手札に加わることとなるだろう。そして一度ウギンの目がバニでさえスレばスタンダードでも猛威を奮っているウラモグが、ミシュラン作戦に移行しようとする緑黒デッキの息の根すら暴食してしまうのだ。このデッキは3T忘却蒔き、4Tウギンの目といった最良の動きを取ることでで5T目にウラモグを盤面に叩きつけることができる。そしてそうでなくとも、9Tにでもこのカードを唱えればミッドレンジ型デッキは息の根が止まることとなるだろう。

オルゾフカラーとなった理由

 白タッチは大きく2つの意味合いがある。1つはメイン戦がとても不利な親和、バーンとのマッチアップの改善だ。石のような静寂や、機を見た援軍といったカードはこれらの対策となるが、他の色ではそのオプションを得ることができない。そしてもう一つが未練ある魂と流刑への道である。他のカラーリングでも確かに除去は存在するが、追放できない除去は昇華者との相性が悪いといえる。また、未練ある魂のような消耗戦に強く、アグロにも効果的なカードは持っておいて損することはない。

 覚えておいて欲しいのはこのデッキは他のミッドレンジを殺すために作られたようなデッキである。ジャンドではなく、アブザンを持ち込む事によって相手のミッドレンジを殺そうとしているのと同じように。

他のデッキとの相性

 既存の緑黒やグリクシスでエルドラージと渡り合えると思っているのならば、それは大きな間違いだ。僕のテストプレイの結果としてはエルドラージのほうが有利だと思っている。というのも既存のフェアデッキからすればこのデッキの動きは完全にアンフェアのそれとなるからだ。双子も序盤の総督の重圧さえなんとか克服できればなんとでもなる。このデッキを使う上で、勝利に向かうために必要な点について、簡単にまとめておこう。

どんどん大きくなる

 タルモゴイフは2T目に4/5で場に現れることとなる。荒廃を招くものも同じように3T目に4/5で現れるが、それにはマナ加速もしてくれる1/1のトークンがおまけとしてついてくるのである。またグリクシスならば4T目にナラー夫妻が出てくるが、その一方このデッキは忘却蒔きが場に降臨することとなる。そして5T目のウラモグを可能としてくるのだ。そう、エルドラージはフェアデッキでありながらもおぞましい速さで打点を形成してくるデッキなのだ。フェアデッキは様々なデッキへの対応を求められてきた。次の対策相手はこいつなのだ。

やり取りの空白化

 衰微やコジレックの審問によって対処されることもなく、ヴェリアナも荒廃を招くものには無力であり、コラガンの命令で1:2交換を要求されるようなアーティファクトも存在しない。そして打ち消しによって誘発能力は止められず、相手は単に瞬唱クリコマで時間稼ぎをすることしかできないのだ。稲妻についても基本的には単なるインスタントの溶岩の撃ち込みヘとその役割を落とすことだろう。

墓地追放

 多くのモダンデッキは墓地にひどく依存している。アブザンならば未練ある魂、ジャンドやグリクシスならコラガンの命令、そして黒緑ならタルモゴイフや漁る軟泥、さらにタシグルもだ。グリクシスならさらに瞬唱やジェイスといったカードまである。墓地を追放していくことで、軟泥や瞬唱を単なるバニラへと変えてしまえる。

ゲームを終わらせる速度

 エルドラージのクロックについては2つの面から思考していく必要があるだろう。まず、忘却蒔きの力によってマナ基盤は早々に整い、相手が中盤戦を戦おうとする頃にはこちらはすでに終盤戦の体で動くことができる。そして一度後半戦へとその足が進められれば、後は時間の問題だけとなる。ウラモグはアンフェアな要素を孕む。瞬唱コラコマなんてへじゃないほどに。

 

 と、ここまで白黒エルドラージの利点を語ってきたが、もちろん弱点も存在する。1G目は親和のサンドバッグになるし、2G目も石のような静寂をみることができなければそのままライフは吹き飛ぶこととなるだろう。バーンやマーフォーク、感染やトロン、護符コンといったピン除去や1:1交換程度のハンデスを苦ともしないような高速デッキに対してもこのデッキは不利となる。あくまでこのデッキは緑黒の発展形である。そのために1T目のギラつかせのエルフや貴族の教主、ゴブリンの先達のようなカードに対してパスを打ちたくないのは理解してもらえるだろう。そして悲しいかな、アブザンのもつサイや軟泥はこのデッキには存在せず、ライフゲインを行うのが実質不可能となるのだ。

 このデッキの強さと弱さをきちんと把握しておくことが重要である。たとえばミッドレンジ型のデッキは赤緑トロンに対して不利となる。しかしながらこのデッキならば緑黒ならばできないようなランプレースが可能となっており、幽霊街をどんどんいれることによって実質5:5までその相性を改善することもできるだろう。きちんとした試行によって、よりよい選択を行えることとなるだろう。

エルドラージの未来は明るい。

 少なくとも暫くの間、このデッキは最低でもTier2の環境に現れることとなるだろう。このデッキの動きは思っているほど狂っているものではなく、あくまでこのデッキの強さはメタゲームへの適合性に強く依存しているように思う。このデッキについて知ってると自信を持って言えるだろうか。メタゲームの中でこのデッキがどの層に収まるか断言できるだろうか。僕はこのデッキについてもっともっと語っていきたい。

 きっとまたしばらくすれば、新たな知見が手に入ることとなるだろう。今後のDeck of the Weekだけでなく様々な記事についても期待しておいて欲しい。

 では!