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時代遅れのモダンのコントロールデッキからの脱却(Staying Away from Traditional Control Decks in Modern by Shahar Shenher)

Staying Away from Traditional Control Decks in Modern by Shahar Shenhar - Magic the Gathering (MTG) より

 

DNでやれという声が聞こえる。その通りである。

カード名に日本語訳もつけたほうがいいんですかね?

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 Charlotteで行われたモダンのグランプリにおいて、Zac Elsikがこのデッキを用いてベスト16に残ることができた。

Lantern Control by Zac Elsik
Finished 9th - 16th Place at 2015 Grand Prix Charlotte - 6/13

3 Creatures
3 Spellskite/呪文滑り

40 Spells
2 Abrupt Decay/突然の衰微
4 Ancient Stirrings/古きものの活性
4 Codex Shredder/写本裁断機
2 Duress/強迫
4 Ensnaring Bridge/罠の橋
4 Ghoulcaller's Bell/グール呼びの鈴
3 Gitaxian Probe/ギタクシア派の調査
3 Inquisition of Kozilek/コジレックの審問
4 Lantern of Insight/洞察のランタン
3 Mox Opal/オパールのモックス
3 Pithing Needle/真髄の針
2 Pyrite Spellbomb/黄鉄の呪文爆弾
2 Surgical Extraction/外科的摘出

17 Lands
2 Academy Ruins/アカデミーの廃墟
2 Blackcleave Cliffs/黒割れの崖
2 Copperline Gorge/銅線の地溝
2 Ghost Quarter/幽霊街
4 Glimmervoid/空僻地
4 Llanowar Wastes/ラノワールの荒原
1 Tendo Ice Bridge/天の橋、天戸

Sideboard
1 Ancient Grudge/古えの遺恨
1 Bow of Nylea/ナイレアの弓
1 Grafdigger's Cage/墓掘りの檻
3 Nature's Claim/自然の要求
3 Pyroclasm/紅蓮地獄
4 Sun Droplet/太陽のしずく
2 Welding Jar/溶接の壺

 

 このよく練りこまれたデッキはとても素敵なデッキであり、プレイして楽しいものである上、おそらく調整に多大な努力がなされてきただろう。このデッキは常軌を逸しており、そして独創性に優れている。しかしながら、私はこの手のデッキをグランプリに持ち込網とすることに対して、まったくもって賛成しない。以下に述べるような理由で、モダンにおいてコントロールデッキを選択することは悪手である、ということを述べていきたい。

 

 コントロールデッキはカードアドバンテージを得るためにカウンターや除去を使う、受動的なデッキであると定義できるだろう。しかしながら、昨今のモダン環境においてはクリーチャーがとても強く、いろんな効果を戦況に及ぼし、その幾つかはEtB(戦場に出た時に誘発する効果、CiPとも)をもつためにたとえ除去されたとしても十分なアドバンテージを使用者に与えてしまうのだ。例えば黄金牙、タシグル、タルモゴイフ、野生のナカティル、包囲サイ、瞬唱の魔道士、闇の腹心に目を向けてみよう、これらのカードは先ほど言ったとても強いクリーチャーであり、かつこれらは戦場に出てすぐ殺されるか、はたまたゲームを支配し使用者に勝利をもたらすかしないのである。同時に、青白コントロールデッキにおいてこれらのカードに最もよく効くカードとしては流刑への道や四肢切断、至高の評決といったカードが例としてあげられるだろうが、これらのカードはこの脅威を完全に断ち切ったとはいえないのである。四肢切断は黒マナが出ないデッキではそう何枚も打てるものではないため、採用枚数は1枚に留められるだろう。もし1枚も採用していない状態で相手が2ターン目に唱えた闇の腹心を着地させてしまえば、たとえそれを2ターン後に除去することに成功したとしても、その間に産まれたカード、もしくはライフアドバンテージによって困窮に瀕することになるだろう。しかもこの手のデッキというものはコントロール側の手札リソースをハンデスやヴェールのリリアナで落とし、軽量でコスパのよいクリーチャーを唱えてくるのだ。

 さらに言えば、モダンには多量のコンボデッキが存在し、それら一つ一つに対応するカードが必要となるのだが、青白コントロールのような受動的なデッキにおいてはそれらのデッキ全てに対応できるほどのサイドボードを用意することができないのである。

 

 以下に示すものがモダンにおいて対策すべきコンボデッキである。

青赤x 双子

親和

御霊の復讐

赤単バーン

むかつき

赤緑トロン

ストーム

感染

呪禁オーラ

護符コン

  受動的なデッキにとって、これらのコンボ一直線なデッキを捌き切るためには、たった15枚しかないサイドボードに、手札にもってくる事自体がそれほど容易ではないとわかっていてもシルバーバレットをつめこまなくてはならない。一方、能動的なデッキにおいては多少のシルバーバレットを採用することはあるが、勝つためには必ずしも引かなくてはならない、ということはないわけだ。例えば赤単バーンが双子、もしくはその手のデッキと対戦している場合においても焼却や引き裂く流弾をバーン側が双子を倒すために引き入れる必要はなく、単純にいつものように相手を焼ききってしまえばいいのである。双子側も同様に、ドラゴンの爪などのバーン側へのシルバーバレットを引かずとも、ただコンボを成立させてしまえばいいのである。

 

 更に、現在コントロールデッキがカードアドバンテージを獲得するために都合のいいカードが存在しない、という問題がある。祖先の幻視や、精神を刻むもの、ジェイスはともに禁止カードであり、相手の行動を遅らせるカードも多くはない。スフィンクスの啓示のようなカードもあるが、この手のカードは概してコストが重く、ヴェールのリリアナや大爆発の魔道士、もしくは単なるハンデスによってそのカードを用いた逆転戦略はオジャンになってしまうこととなる。コントロールデッキは相手よりも多量の土地をプレイする必要があり、ゲーム後半においてカードアドバンテージを得るための確固たる方法が無い限りコントロールデッキ側が土地を1枚置くたびに対戦相手の手を1手先に誘導してしまっているのである。たとえこの問題がドロースペルの少なさによるものであったとしても、25~26枚の土地を20~22枚に減らすということはおそらくしないだろうからね。そして、コントロールデッキを使っていて本当に得られるアドバンテージというものは、採用されているクリーチャーの枚数が少ないために相手が除去カードを引くたびにそれが無駄牌となってしまう一方で自身の使うそれはとても有用なものとなる、というその1点だろう。

 

 では、モダン環境において、どのようなデッキを組めばいいかをPatrick Chapinを9位に入賞させたグリクシスのデッキを参考にして考えてみたいと思う。

Grixis Control by Patrick Chapin
Finished 9th - 16th Place at 2015 Grand Prix Charlotte - 6/13

9 Creatures
3 Gurmag Angler/グルマグのアンコウ
4 Snapcaster Mage/瞬唱の魔道士
2 Tasigur, the Golden Fang/黄金牙、タシグル

30 Spells
4 Cryptic Command/謎めいた命令
1 Dispel/払拭
1 Electrolyze/電解
2 Kolaghan's Command/コラガンの命令
4 Lightning Bolt/稲妻
2 Mana Leak/マナ漏出
1 Remand/差し戻し
4 Serum Visions/血清の幻視
1 Shadow of Doubt/疑念の影
2 Spell Snare/呪文嵌め
4 Terminate/終止
4 Thought Scour/思考掃き

21 Lands
2 Creeping Tar Pit/忍び寄るタール坑
3 Island/島
1 Mountain/山
4 Polluted Delta/汚染された三角州
4 Scalding Tarn/沸騰する小湖
2 Steam Vents/蒸気孔
2 Sulfur Falls/硫黄の滝
1 Swamp/沼
2 Watery Grave/湿った墓

Sideboard
1 Batterskull/殴打頭蓋
1 Countersquall/対抗突風
1 Damnation/滅び
2 Dispel/払拭
1 Flashfreeze/瞬間凍結
4 Fulminator Mage/大爆発の魔道士
1 Izzet Staticaster/イゼットの静電術士
1 Keranos, God of Storms/嵐の神、ケラノス
1 Shriekmaw/叫び大口
1 Slay/殺戮
1 Spellskite/呪文滑り

  Patrick Chapinは自身の名を、28枚の土地を用いた残酷コンを皮切りとした様々なコントロールデッキの創出によって世に知らしめてきた。このデッキに採用されている土地の枚数は21枚であり、4枚の血清の幻視と思考掃き、そして2つの大きな脅威として、黄金牙、タシグルとグルマグのアンコウが採用されていることがわかるだろう。このデッキはコントロールデッキとしての側面を残しつつ、能動性を与えているのである。アグロ・コントロール、という組み分けがこのデッキにとって一番ふさわしいものであるだろうし、この手のデッキにおいて瞬唱の魔道士は最高のカードであると言えるだろう。謎めいた命令やコラガンの命令、そして稲妻は「対戦相手のクリーチャー全てを焼き払い、場にも出させない」、というロックに始まり「対戦相手のライフを焼き切り、そして謎めいた命令で行動不能にさせる」という到達点に至ることができるだけの地力をこのデッキに与えてくれている。そしてこれは受動的、能動的、いずれのデッキに対してもとても強力なカードになるといえる。

 この手のデッキは僕のお気に入りのアーキタイプであるとともに、使いたいという衝動を沸き起こしてくれた。僕がモダンにおいて最初ににくんだデッキはマーフォークであったがすぐにフェアリーや青白デルバー、トリコロールデルバーへと心変わりし、最終的にトリコロールコントロールを携えて初めての世界選手権に望む事となった。数年来このようなアグロ・コントロールデッキを使うことによって、どのようなタイミングにおいて攻撃的/防御的になるべきかについて気づけるようになった。僕がもつ、試合中に発揮される一番の強みだといえるのはより攻撃的になることで、いつこのゲームを完全に掌握できるかがわかるということである。たとえば、手札に火力を握り続けているのをやめて、対戦相手を焼ききるとともに謎めいた命令を尻込み*1とブーメランの融合カードとして唱える、といったようにね。

 これは黒や白のカードっぽいことではあるが、場を制圧したら今度はアグレッシブになるべきだ。単純だって?そう簡単ではない。もし選択を間違えてしまえば、例えば対戦相手に稲妻をうったとしてその3ターン後にヴェンディリオン三人衆に殺されてしまうようなことがあれば、それはかなりの痛手となると思わないかい?アグロ・コントロール型のデッキを使う、ということは他のいかなるデッキを操る、というよりは芸術品をつくる、といったほうが似合うと思う。デッキにあるすべてのカードは様々な異なる能力をもち、それを用いてどのように動くか、それとも今は動かなくていいのか、むしろ戻るべきなのか、といった選択をできるからこそ、僕はこの手のデッキが大好きになったわけだ。

 もし願わくば、僕もPatrickのものに似たデッキを使いたかった。実際には僕はジャンドとかいうモダンにおいて最もしょうもないデッキを使った。デッキはとてもいいもので、最悪でもTier(使用者の割合を加味したメタゲーム上での強さの指標)1.5くらいはあっただろうが、ここで楽しく語れるだけの能力は持ち合わせていなかった。さらに言えばすでにジャンドに関する記事はあちらこちらに転がっているし、次のモダントーナメントで使いたい、そしてさらに言えば今後さらに改良を重ねていきたいデッキを紹介したいと思う。

 Grixis Moon by Shahar Shenhar

8 Creatures
4 Snapcaster Mage/瞬唱の魔道士
1 Spellskite/呪文滑り
3 Tasigur, the Golden Fang/黄金牙、タシグル

30 Spells
2 Blood Moon/血染めの月
3 Cryptic Command/謎めいた命令
2 Deprive/剥奪
1 Dismember/四肢切断
2 Go for the Throat/喉首狙い
3 Kolaghan's Command/コラガンの命令
4 Lightning Bolt/稲妻
1 Remand/差し戻し
4 Serum Visions/血清の幻視
3 Spell Snare/呪文嵌め
3 Thought Scour/思考掃き
2 Vedalken Shackles/ヴィダルケンの枷

22 Lands
1 Academy Ruins/アカデミーの廃墟
1 Blood Crypt/血の墓所
1 Flooded Strand/溢れかえる岸辺
6 Island/島
1 Mountain/山
4 Polluted Delta/汚染された三角州
4 Scalding Tarn/沸騰する小湖
2 Steam Vents/蒸気孔
1 Swamp/沼
1 Watery Grave/湿った墓

Sideboard
2 Anger of the Gods/神々の憤怒
1 Blood Moon/血染めの月
1 Counterflux/対抗変転
2 Dispel/払拭
2 Engineered Explosives/仕組まれた爆薬
2 Keranos, God of Storms/嵐の神、ケラノス
1 Murderous Cut/残忍な切断
1 Negate/否認
1 Spellskite/呪文滑り
2 Vendilion Clique/ヴェンディリオン三人衆

  このデッキはよりよいデッキである!実際白より黒を優先してデッキに採用した理由としては黄金牙、タシグルの存在がある。このカードは基本的にこのデッキでしたいことを全てこなしてくれる。維持すればカードアドバンテージを得ることができ、相手クリーチャーの壁となり、そして他の軽量スペルによって少ないマナ消費で場に登場することができる。おそらくこのカードは1、あっても2マナで場に出ることができ、打ち消しや除去を構えながら展開することができる。また、稲妻や電解、コラガンの命令、そして突然の衰微をものともせず、場に居座ることができる。このカードはこのデッキにおいて、どのような点においても完璧という他ないだろう。もしターン終了時に盤面を固定することに成功したならば、アンタップ後に血染めの月とタシグルを同時に並べてしまおう。

 上記の様々な理由も素晴らしいものではあるが、このカードが現在とても強い最大の理由としてはタルモゴイフをチャンプブロックできるところにある。コントロールデッキにおいて、カウンターをかいくぐり戦場に降り立ち、稲妻でも落ちることのないタルモゴイフにどう対処するかは永年の課題である。対戦相手はコントロール側の除去をハンデスで無力化し、打ち消しを構えられるようになる前にタルモゴイフをプレイすることによって早急にコントロール使いを打ちのめすこととなるだろう。このデッキもこの問題を孕んでいないという気はないが、このちょっとひねくれたカードによって解決しやすくなった、ということに価値がある、と考えているのだ。結局のところ、モダンにおける非コンボデッキが考え無くてはならないことは、如何にして1枚のカードを用いて様々な脅威に対処できるか、という問であるだろう。

 

 今週末僕はProvidenceでスタンダードのグランプリに出場するつもりだ。まだ何を使うかは決めていないが、今まで使ってきたデッキのうちいずれか、という形にはなるだろう。つまりバーンやエスパードラゴンではなく、青黒コン、もしくはアブザンのデッキ(コントロール、もしくはアグロ型)をつかうことになるだろう。まあ、もし明日がグランプリだというのならば、おそらくこんなアブザンアグロを使うだろうね。

Abzan Aggro by Shahar Shenhar

20 Creatures
4 Anafenza, the Foremost/族樹の精霊、アナフェンザ
4 Fleecemane Lion/羊毛鬣のライオン
4 Rakshasa Deathdealer/ラクシャーサの死与え
4 Siege Rhino/包囲サイ
1 Tasigur, the Golden Fang/黄金牙、タシグル
3 Wingmate Roc/風番いのロック

15 Spells
1 Sorin, Solemn Visitor/真面目な訪問者、ソリン
4 Abzan Charm/アブザンの魔除け
3 Dromoka's Command/ドロモカの命令
3 Hero's Downfall/英雄の破滅
4 Thoughtseize/思考囲い

25 Lands
3 Caves of Koilos/コイロスの洞窟
2 Forest/森
3 Llanowar Wastes/ラノワールの荒原
2 Plains/平地
4 Sandsteppe Citadel/砂平原の城塞
3 Temple of Malady/疾病の神殿
3 Temple of Silence/静寂の神殿
1 Urborg, Tomb of Yawgmoth/ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 Windswept Heath/吹きさらしの荒野

Sideboard
3 Arashin Cleric/アラシンの僧侶
3 Bile Blight/胆汁病
3 Drown in Sorrow/悲哀まみれ
2 Duress/強迫
1 Elspeth, Sun's Champion/太陽の勇者、エルズペス
2 Self-Inflicted Wound/自傷
1 Sorin, Solemn Visitor/真面目な訪問者、ソリン

 このグランプリが終わったら、一度イスラエルに家族に会いに戻ろうと思う。そしてその次に出るとすればおそらくMontrealでのグランプリになるだろう。まあ、Providenceでみんなに会えるのを楽しみにしてるけどね!

*1:Falter / 尻込み 1R
インスタント
このターン、飛行を持たないクリーチャーではブロックできない。